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青森のうまいものたち

岩木山の麓で作られる「一町田のせり」(2019年12月)

せり

極寒の中、水に入り手作業で収穫をするセリが弘前市一町田(いっちょうだ)地区で栽培されているのをご存知でしょうか?「一町田のせり」と呼ばれ、地元で親しまれています。
今回、お話を伺ったのは神奈川県出身で大学進学を機に青森県弘前市にやってきた伊東竜太さん。大学卒業後、そのまま青森県内の農業法人に就職し、その後農家として独立。ぶどうとセリを生産しています。収穫時期真っ最中のセリの美味しさのポイントや、こだわりを伺いました。

一町田地域の恵み

鍋料理や春の七草粥に使われているセリは、水田や河川など水辺に密生しています。セリ栽培が盛んな青森県弘前市一町田地区は、旧岩木町に位置し、弘前市内から岩木山に向かう途中にあります。一町田地区は山の麓にあり、岩木山の湧水が流れている地域です。

岩木山

「一町田のせり」が美味しいセリになる理由の一つがこの岩木山の湧水。
津軽地方は全国的にも有名な豪雪地帯で、通常水辺は大量の降雪と寒さによりすぐに凍ってしまうのですが、この地域は岩木山の湧水が常に流れてくることで、セリ田が凍らず、真冬でも収穫作業をすることができます。厳しい寒さや霜にあたることで、歯ごたえがよく香りも高いセリになります。

セリ栽培のきっかけ

せり田

「興味がある」から「やりたい」へ

もともと食べ物に興味があったという理由で、弘前大学農学生命科学部に進学した伊東さん。
大学では、農業水路や土木関係の研究をしていましたが、その研究の中、ずっと心にあったのは “食べ物に対する興味”。
休みの日は青森市浪岡出身の友人のりんご畑を手伝うなど、次第に生産者を志すようになりました。

農業法人へ就職、そして独立

大学卒業後は、青森県内の農業法人に就職し約4年後に独立。ぶどう農家として就農し弘前市一町田に住みはじめました。地元の一町田のセリ農家の方に、「セリを作ってみないか?」と声をかけられたことがきっかけで、伊東さんのセリ栽培がはじまりました。

栽培のこだわり

「仙台セリ」で有名な名取市で多く作られている品種を栽培

「一町田のせり」の多くは島根県からやってきた品種が栽培されていますが、伊東さんは「仙台セリ」で有名な宮城県名取市の品種を栽培しています。

最初は「一町田のせり」の多く占める「松江みどり」という品種を栽培していましたが、より良いセリを作りたいという思いから、全国的にセリ栽培が有名な秋田の湯沢市と宮城の名取市に視察に行きました。そこで見たセリは想像以上に上質で驚いたそうです。それをきっかけに一町田でも更に美味しいセリを作ろうと、名取市で作られていた品種・栽培方法でセリを育てることになりました。

ひと手間加える

冬の収穫時、全てのセリを収穫せず、翌年の繁殖用としてセリ田の一角を残しておきます。冬を越し、5~6月に残した一角のセリを引き抜きます。春夏の時期のセリ栽培は、食べるためのものではなく、より良いセリを育てるための、ランナー(親株)づくりなのです。

夏になるとあっという間にセリがセリ田一面に広がります。セリ田の中では、着々とランナーが大きく長く成長していきます。
ランナーの節々から伸びている茎の部分が、一般にスーパー等で売られているセリの部分です。
通常の作業では、セリ田の中で水に浸っている状態のまま、カマでランナーからセリを刈り発芽させます。

ランナー
ランナー(親株)
セリ(1束)
冬に収穫したセリ

一方、伊東さんの栽培方法は、水の中で刈るのではなく、一度ランナーごとセリ田から引き抜きます。
乾燥させないよう細心の注意を払いながら作業小屋で押切(おしきり)という道具を使ってランナーからセリを刈ります。その後、芽出しをして、セリ田に定植させています。

この方法は、伊東さんが名取市のセリ農家さんのところへ視察に行ったときに教えてもらったやり方で、より太いセリを栽培するために実施しています。

一度引き抜く手間を加えることで、時間もかかってしまいますが、「美味しいと言って食べてくれることが励みになるから」と伊東さんは言います。

出荷できるのはほんのわずか

収穫したせり
収穫後、選別

セリは収穫したものをそのまま出荷することができません。
傷がついていたりちぎれてしまったセリを選別すると、最終的にほんのわずかな量にまで減ってしまうそう。
この選別作業が膨大で、根や葉を丁寧に細かいところまで洗い、土を落として綺麗な状態で出荷します。

根まで食べてもらいたい思いから丁寧に洗う

せり田で洗う様子

セリの特に味わってもらいたい部分は根の部分。細かいところまでしっかり洗います。
「セリを買ってそのまま根っこも食べてほしいんです。少しでも土がついていると切り落としたくなりますよね」とこだわりを教えてくれました。

収穫に費やす時間の約4倍はかかっているという、洗い仕分けする作業。セリを作るきっかけをくれた一町田のセリ農家のお母さんが、洗い方や、丁寧に洗う大切さを教えてくれました。

洗い仕分けの作業は、採算性が悪いように感じるかもしれません。しかし伊東さんは、『食べ物を作っている』という気持ちを大切に、「洗い方の効率を上げる方法を試行錯誤しながら、丁寧な洗い仕分けをこれからも続けていきたい」と話します。

「毎年、栽培して、振り返って、改善して、の繰り返しです」と、伊東さんの目線はすでに来年のセリ栽培に向かっていました。

理想のセリを追い求めて

伊藤竜太さん

今年収穫されたセリでも十分太い印象ですが、伊東さんはもっと太く長く、バリバリとした食感の良い「一町田のせり」を目指しています。

セリは氷点下の風にさらされると、葉も茎も縮み、さらに茎部分は平らになってしまいます。そのため、ビニールハウスの中で栽培してみるなど、そのときの気候に合わせたスケジュール管理を徹底し、理想のセリを作れるよう日々勉強中だそうです。

セリを主役に!

これまで、わき役として料理を引き立たせていたセリですが、伊東さんはメインの食材になり得ると思っています。「すでに宮城ではセリ鍋など、セリが主役の料理があるので、青森でも、地域ならではのセリが主役になる料理ができると嬉しい」と、「一町田のせり」の将来を楽しみにしていました。

購入できるお店

ANEKKO(あねっこ)

住所(直売所 野市里) 青森県弘前市大字宮地字川添77-4
TEL 0172-82-1055
Webサイト ANEKKO(あねっこ) Webページ

施設内にあるレストラン「こざくら」では、冬季限定で伊東さんの育てたセリを使ったメニューをご用意しております。出荷量が少なく希少なセリのため数量限定販売の場合がありますが、食べる価値あり!

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