これから夏、秋にかけ品目を変えて旬を迎える青森県の高原野菜。
今月は、青森県平川市の標高約800mの南八甲田と呼ばれるエリアを尋ねました。
1955年、青森県板柳町の新設によって消滅した旧畑岡村という場所がありました。
昭和27年、その畑岡村の分村を開こうと37戸の住民がこの南八甲田の地に入植した事で南八甲田高原野菜の歴史が始まったとされています。入植当時は木と草の生い茂る山間だったことが想像できますが、今では南八甲田山麓に位置する高原野菜一大生産地として知られています。
一番標高が高いエリアにある、善光寺平(ぜんこうじだいら)には“永遠之繁栄”と刻まれた、開拓三十五周年記念碑があります。入植当初は37戸がでしたが、記念碑建立時には13戸になっていたそうです。「祖を念(おも)い、[中略]残りし我ら[中略]善光寺平繁栄に鞭打つを誓う」との決意が述べられていることからもわかるように、入植当時は鍬(くわ)等の人力での開拓だったと思われ、かなりの困難だった事が伺えます。
南八甲田高原野菜が作られる立地
南八甲田高原野菜とは、青森県平川市の大木平、善光寺平、葛川、平六、小国、切明、井戸沢の地区で形成される生産組合が、南八甲田山系の南西に位置する、標高350~750mの山間地で栽培したものを言います。
標高750mのエリアは、冬季2~3mもの雪が降り積もる豪雪地帯で、4月になると雪がほとんどなくなる市街地と比べて雪解けも遅く、ゴールデンウィークころまで雪が残っています。そのため、栽培が始まるのが5月末頃から。
組合生産者のほとんどの人は、冬場は麓の村に降りて暮らし、農繁期は集落で過ごすというライフスタイルを送っているそうです。
南八甲田高原野菜のおおよその生産地
南八甲田高原野菜
栽培面積の一番多いのが、大根。続いてニンジン、キャベツ、こかぶ、レタスなどが栽培されています。
早い品目で6月~出荷され始めます。
大根 7~10月下旬
ニンジン 8下~11月中旬
キャベツ 7上~11上
こかぶ 6上~10下
レタス 6中~9中
南八甲田と呼ばれるこのエリアは6月から8月にかけて、オホーツク海気団より冷たく湿った北東風ヤマセが吹き付けるため、背の高くなる野菜や温暖な気候を好む野菜は向いていません。
反面、根菜類や葉菜類はヤマセや、標高によって市街地よりも大きくなる昼夜の寒暖差によって味わいを増すと言われ、この環境が作り出す味わいも産地のブランド化を後押ししているといえます。
組合で一番出荷量の多い大根は、全国から引き合いも多く、夏から秋にかけてシーズン約20万箱もの数が出荷されています。
取材時、南八甲田高原野菜生産組合の元組合長の永田さんにお話を聞くことができました。
2018年は気温が上がるのが遅く、野菜の成長が遅いと永田さんは言います。
善光寺平に畑を構えている永田さんは、このエリアで採れる人参は味の評価が高く、わざわざ買いに来る方もいるとおっしゃっていました。永田さんの一族もこのエリアを開拓した一人だそうで、永田さんは20代の時に、実家に戻り園地を受け継ぎ、守り続けています。
畑では植わった大根が成長中、人参の播種(種まき)を控えていました。
生産者自ら品質向上と統一を徹底
品質の統一
南八甲田高原野菜生産組合の生産者は、“根菜部会”、“葉菜部会”に分かれ定期的な情報共有などを行っています。情報共有の上で、生産者たち自ら、一般的な基準よりも厳しい品質管理の元、出荷しています。
南八甲田高原野菜生産組合は、集荷先の検品でなく、生産者ごとに各自が厳しく検品するスタイルをとっています。
高原野菜のための土づくり
南八甲田高原生産組合の生産者さんのほとんどは10町歩(約10万平方メートル)近い面積の大規模栽培をしています。
単一品目を毎年栽培していくことで、病気になりやすくなったり、障害が起きることがあります。
対策として、作物の様子を見ながら土を休ませ、その土に麦やえん麦を播き、“緑肥”として収穫せず、鋤(す)き込むことによって回復を図っています。
また、市街地に比べ、年間を通して冷涼な気温や、冬季に雪深くなる等の理由から、薬なども通常よりも少なめです。
これからどんどん収穫を迎える南八甲田高原野菜を見かけたら是非、お手に取ってみてください。
南八甲田高原野菜についてのお問い合わせ先
名称 | JA津軽みらい南八甲田高原野菜生産組合 |
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住所 | 青森県平川市葛川平六沢上2-1 |
電話 | 0172-55-2504(JA津軽みらい葛川野菜センター) |
<南八甲田高原野菜を購入できる場所>
・産直センターひらか(青森県平川市小和森字上松岡211-1)
・JA津軽みらい葛川支店前直売所(青森県平川市葛川大川添27-5)