夏が終わりに近づいたとはいえ、まだ日中は暑い日が続きます。今月は暑い時期にぴったりな、ミネラル豊富な海藻「エゴノリ」を紹介します。
エゴノリとは
エゴノリはイギス科エゴノリ属の紅海藻で、沖縄を除く全国沿岸の浅いところに生えますが、特に日本海沿岸に多く分布しており、青森県では深浦町、中泊町、外ヶ浜町の日本海側で多く収穫されています。色は赤く、かぎ状の枝先で他の海藻に絡みつき、糸状の塊となって生長します。
エゴノリにはミネラルのほか、骨や歯を丈夫にするカルシウムが豊富なことに加え、貧血予防に有効なビタミンB12、止血や骨粗しょう症予防に役立つビタミンK、成長促進には欠かせないたんぱく質も多く含まれています。低カロリーで食物繊維が豊富なので、ダイエット食としても効果的です。
漁から加工までの手間ひま
エゴノリ漁は7月下旬から始まり、8月中旬になると牡蠣がエゴノリに付着して硬くなり食用には不向きになることから、概ね8月中旬までの短い期間で行われます。
エゴノリに絡みついた他の海藻を選り分けて、天日に干す作業は全て手作業で行われます。漁当日に全ての作業を行わないとエゴノリが劣化してしまうので、漁は天気が良く空気が乾燥した日に限られます。
乾燥させたエゴノリは、黒色または茶褐色ですが、乾燥と洗浄を繰り返すことで徐々に色が抜けて白っぽくなります。エゴノリの販売を取り扱う問屋では、販売先の小売業者や飲食店の用途に応じて乾燥と洗浄を繰り返して色を調整したエゴノリを出荷します。
郷土料理「エゴ天」
現代のように流通や冷蔵・冷凍技術による保存技術が発達していなかった頃、さまざまな工夫を凝らして海藻を食生活に取り入れて暮らしていました。エゴノリを使った料理もその一つで、普段は乾燥した「エゴ草(ぐさ)」として保存しておき、必要な時に「エゴ天」を作り、食卓の一品に仕上げます。
最近では家庭で作ることが減り、エゴノリの消費量も減少傾向にあるようですが、調理は比較的簡単なので、「エゴ草」が手に入ったら、ぜひ手作りの「エゴ天」を作ってみませんか。
「エゴ天」の作り方
基本的な「エゴ天」の材料と作り方です。
【材料】
エゴ草 : 50g
水 : 1000cc
【作り方】
- エゴ草をほぐしながらよく水洗いして、ゴミを取り除く。
- 鍋に1000ccの水を入れ、水をよく切ったエゴ草を加えてから火にかけ、煮立てる。
- 煮立ち始めたら中火にして、木べらなどでゆっくりとかき混ぜる。
- エゴ草が煮溶けたら弱火にして、鍋の底を焦がさないように10~15分くらい木べらで練り混ぜる。
- 煮溶かしたエゴ草を鍋から型に流し込み、粗熱が取れてから冷蔵庫で冷やし固める。
「エゴ天」の食べ方
ひと口大に切って、酢味噌やわさび醤油などでいただくのが一般的ですが、麺つゆやポン酢をかけ、かつお節を乗せると、簡単で美味しくいただけます。
その他、海藻のふんわりした風味を生かして白和えにするのもお勧めです。
夏の暑さや残暑のために食欲が無い時、エゴ天の滑らかで喉越しの良い食感は嬉しいものです。ぜひ一度、お試しください。
・販売店等
風合瀬いか焼村 0173-76-3660
鰺ヶ沢海の駅わんど 0173-72-6661
・取材協力
新深浦町漁業協同組合 0173-76-2511