今月は、春を告げる魚、津軽海峡の「サクラマス」をご紹介します。
津軽海峡の「サクラマス」
青森県のサクラマスの漁獲量は379tで、このうち7割以上が下北地域(津軽海峡)で漁獲されています。この地域で漁獲される魚種の生産額は、マグロ、サケ、ヒラメ、サクラマスの順に多く、サクラマスは下北の主要魚種と言えます(H25青森県海面漁業に関する調査結果書)。
雪解け水が流れ込む北の海で漁獲されたサクラマスは身が引き締まり、2kg以上のものは特に脂ののりが良く、味の良さは格別です。
そんなサクラマスのブランド化を目指し、地元の漁協や研究機関、地元企業などが連携し、地域一丸となって様々な取り組みを行っています。
船上活締めサクラマス
むつ市の大畑漁協では、定置網で漁獲されたサクラマスに対し船上で「活締め脱血」の処理を行っています。
漁獲された魚は海へ逃げようと必死に暴れるため、体温が上がって体力を消耗し身の鮮度が早く低下してしまうので、それを防ぐために漁獲直後に活締めし動きを止めます。津軽海峡の荒波で激しく揺れる船上で、暴れるサクラマスを活締めする作業は大変難しく、熟練の技術を必要とします。
活締め後は、すぐに殺菌した海水に入れ血液を十分に抜きます。血液を抜くことで、生臭みが消え、身の色も美しいサーモンピンクになります。
活締め脱血処理をすることによって、歯ごたえのしっかりした肉質が持続され、プリプリの食感と鮮やかな色合いを楽しむことができます。
船上で活締め脱血処理されたサクラマスは、産地名が記載されたシールを同封し首都圏などに出荷されます。専用のロゴマークやシールが商品についていることで産地をイメージしやすく、「船上活締めサクラマス」として他県産のものと差別化できるようになりました。
「活締め脱血」のここがスゴイ!
魚の鮮度は「K値」という数値を調べることでわかります。K値が低いほど鮮度がよく、K値が20%を超えると刺身で食べることは厳しくなります。 サクラマスを船上で活締め脱血処理することで、K値の上昇が抑えられ、約15時間も獲れたての鮮度を維持できることがわかっています。
(下北ブランド研究所調査)
*「K値」とは、魚の鮮度を示す客観的指数のひとつ。魚類の筋肉中にはアデノシン三リン酸が含まれ、死後、アデノシン二リン酸→アデニル酸→イノシン酸→イノシン→ヒポキサンチンと分解される。生きが悪くなるに従って、イノシンとヒポキサンチンが増えることから、アデノシン三リン酸の分解生成物全量に対するイノシンとヒポキサンチンの割合(百分率)をK値とし、その値が小さいほど生鮮度が良好なことを示す。
サクラマスを刺身で食べる(冷凍刺身柵)
自然界で暮らすさけ・ます類には寄生虫がいる場合があり、刺身など生で食べると腹痛を起こすことがあります。冷凍することにより寄生虫を死滅させることができるため、リスクをなくすことができますが、解凍した際に水っぽくなったり、身がもろくなったりして、冷凍前の状態に比べて品質が著しく低下してしまいます。
このような理由からサクラマスの冷凍刺身製品はこれまでありませんでしたが、劣化を最小限に抑える急速冷凍技術により製造可能となりました。液体を使用して食材を素早く冷凍できる急速冷凍機(リキッドフリーザー)により、品質を落とさず、また安全に鮮度のよいサクラマスの刺身を食べることができます。
冷凍したサクラマスの品質は、冷凍前の状態で決まります。獲れたその日に素早く産地で加工することも鮮度維持のためのポイントです。
*冷凍刺身柵は、今後本格的に販売されます。
「急速冷凍」のここがスゴイ!
冷凍食品の品質は解凍時に身から出てくる水の量(ドリップ)で評価されます。急速冷凍は、通常の冷凍に比べて、解凍時のドリップが低く抑えられることが分析の結果わかりました。流水中で急速に解凍することにより、ドリップをさらに抑えることができます。
(下北ブランド研究所調査)
サクラマス加工品
ブランド力向上のため、地元素材と組み合わせた加工品が誕生しました。
船上活締めサクラマスを使用した「サクラマスのさかさ寿し」(押し寿司)。シャリには粘りの強い県産米「ゆきのはな」を使用し、また、サクラマスの身がしっかりしているので食べごたえがあります。
サクラマスのさかさ寿しはこちらのサイトから購入できます。(外部サイト)
http://www.umai-mon.com/user/scripts/p_product.php?product_id=27548
今後、ますますのブランド化が期待される津軽海峡の「サクラマス」。
サクラマス独特の甘みとあっさりとした上品な味わいをお楽しみください。