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産地情報 ~仕留めた傷が鮮度抜群の証!「突きババガレイ(ナメタガレイ)」~ (2023年2月)

仕留めた傷が鮮度抜群の証!「突きババガレイ(ナメタガレイ)」

本州の北端の青森県下北地方、その最北端に位置する大間町は、津軽海峡の荒波にもまれた新鮮な海の幸の宝庫。その中でも、地元の漁師が舌鼓を打つ「突きババガレイ(地域によってナメタガレイとも呼ばれています)」は、古くから大間町で伝えられてきたほこ(地元では、「ほぐ」と呼んでいる)突き漁という非常に難しい漁法で仕留められることから、漁獲量が少なく、鉾(木や竹の竿とヤスを繋いだ漁具)で突いた部分が傷と扱われるため、多くが地元で消費され、地域で愛されています。

この「突きババガレイ」のおいしさの秘密を探るため、大間漁業協同組合を訪ねました。

大間でおいしいババガレイが獲れる理由

大間町の面する津軽海峡は、黒潮と対馬海流、千島海流の3つの海流が流れ込むことで、多くのプランクトンがいる漁場といわれています。大間の鉾突きの代表的なものは、突き鮑漁でしたが、副業として突きババガレイ漁も始まったと言われています。

「津軽海峡は潮の流れが変わりやすい。流れの激しい中で必死に泳いでいるから、身が引き締まった魚が獲れるんですよ。」と教えてくれたのは、大間漁業組合員の竹内勝雄さん。

大間漁業組合員 竹内勝雄さん

現在、大間町でババガレイの鉾突き漁を行っている漁船は、5隻のみ。竹内さんはその中の数少ない漁師のひとりです。

長い鉾を巧みに扱う、鉾突き漁

現在、ババガレイを漁獲する方法として「刺し網漁」が主流となっていますが、大間町の「鉾突き漁」の歴史は古く、明治時代にさかのぼります。船から海底を覗くためのガラス箱(箱メガネ)が明治23年に北海道から伝来し、大間町に鍛冶屋ができたことで、漁具の開発・製作が進み、鉾突き漁用のヤス(鉄製で魚貝類を突き刺す漁具)が普及しました。この鉾とヤスは漁師それぞれオリジナルの形を考え専用の漁具が作られています。

鉾突き漁の船 突きナメタガレイ
鉾突き漁の船

突きババガレイの漁場は、大間崎から北側の沖合にある弁天島周辺の岩礁地帯で、磯船と呼ばれる1トン未満の小船に乗り込み、沖へ向かいます。漁に出られるのは、12月~2月までの漁期間で、冬季で風が吹き、雪解け水で海が濁ったり、潮流関係などで操業できる日は限られてしまい、10日間ほどしか出漁できないそうです。

突きナメタガレイ ヤスが刺さった表皮
鉾とヤス
突きナメタガレイ さばいている様子
鉾をより長くするためつなぎ合わせている

大間漁師がガラス箱をつけ鉾突きができるのはせいぜい水深12メートル位までが限界だとされています。

ババガレイが生息する貝殻瀬の漁場は、水深10メートル前後で特に潮の流れも速く、ガラス箱を歯で嚙みながら13メートル程の長い鉾を使い、海底にいるカレイを一気に突き刺すのは簡単ではありません。これができるのは極めて少ない熟練者で、大間では鮑とババガレイ突きができる腕の良い漁師を『一番漁師』と呼んでいます。

竹内さんは、「海底にババガレイの体の斑点が浮き出て見えるんです。そこを目指してヤスで突きます。長年の経験から潮の流れを読み、3時間の漁で約100kgものババガレイを漁獲しますよ」と言います。

突きナメタガレイ 背びれの横にある斑点模様
背びれの横にある斑点模様

海中活締めが鮮度の秘密

突きババガレイは、ヤスが刺さった表皮に傷がつき、血で赤くなるため、市場にはほとんど出回りません。一方で、ヤスが刺さった瞬間、海中で活締めされた状態になるため、死後硬直までの時間を延ばすことができ、鮮度が抜群です。さらに、ヤスが刺さった部分から血が流れることで、同時に血抜きもされた状態になり、生臭くなることを防ぐことができます。

突きナメタガレイ ヤスが刺さった表皮
ヤスが刺さった表皮
突きナメタガレイ さばいている様子
ヤスが刺さった跡

大間町の突きババガレイの特徴

身に傷がつき、見た目からあまり市場に出回らない突きババガレイは、刺し網漁で漁獲したババガレイよりも大型である傾向があり、大きいもので全長60cm、重さは1.5~2kgにもなります。ババガレイの産卵期は3~4月で、その直前の1~2月に漁獲された雌のババガレイの腹にはたっぷりの真子(卵)が入っています。

「大間町の突きババガレイは、通常の刺し網漁で漁獲されるババガレイよりも味が濃くておいしいんですよ」と語るのは大間漁業組合職員の伊藤幸弘さん。

大間の地元スーパーなどで売られている突きババガレイは卵があるため雌の方が高値で売られていますが、真子(卵)に栄養が回るため、身は雄の方が濃い味わいになるのだそうです。

突きナメタガレイ 全長
約40cmのナメタガレイ

刺身か煮つけがおすすめ!

大間では漁師が正月魚として、親せきや知人に分配する風習がありました。今は少なくなりましたが、食べきれないカレイは、軒下につるし、保存食としていたこともあったそう。

伊藤さんによると、突きババガレイは刺身か煮つけで食べるのがおすすめだと言います。特に刺身は、新鮮な状態でスーパーに並ぶ地元だからこそのぜいたくな食べ方です。漁獲してすぐの突きババガレイの身はもちもちで甘みが強いのが特徴。

煮つけは、各家庭の味付けがされ、大間の正月料理の一品となりました。煮つけは、鱗・内臓・尾びれを落としたら、ぶつ切りにして、みりん、ショウガ、砂糖、醤油で煮込むだけなので、手軽に作ることができます。ぜひ、大間の突きババガレイを頂く機会があれば、刺身もしくは煮つけで召し上がってみてはいかがでしょうか。

突きナメタガレイ 刺身
刺身
突きナメタガレイ 煮つけ
煮つけ
大間漁業協同組合 竹内 勝雄 さん

今回お話を伺ったのは

大間漁業協同組合 竹内 勝雄 さん

大間漁業協同組合
住所 青森県下北郡大間町大字大間字下手道59-3
電話 0175-37-3117

大間漁業協同組合 統括部長兼指導課長 伊藤 幸弘さん


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