つやつやと朱色に輝く身と、上品な脂のり、繊細な味わいが特徴の「サクラマス」。
桜が咲く頃に漁獲されることや、産卵期になると銀白色の身体にピンク色の婚姻色が現れ、桜の色を連想させることからその名が付いたともいわれています。
サケ類のなかで最も市場価値が高く、高級魚として珍重されています。
サクラマスは、渓流のヤマメが海に降りたもの
下北半島の津軽海峡に面したむつ市大畑町。街の中心を流れる大畑川は、上流のブナやヒバなどの森の栄養をたっぷり運びながら津軽海峡に注いでいます。暖流と寒流が交わる津軽海峡は、魚のえさとなるプランクトンが豊富で、大畑海域は好漁場となっています。
「サクラマスは、渓流にいるヤマメが海に降りたものなんです。川で一生を過ごすヤマメもいますが、海に降りてロシアの方を回って数年後に日本の海に帰ってきたものをサクラマスと呼んでいます」と、話すのは、大畑町漁業協同組合業務部販売課部長の氣仙正博さん。渓流にいるヤマメは体長20~30センチメートルなのに対して、海に降りて海洋生活を送ることで脂がのり、40~70センチメートルにまで成長するといいます。
「一本釣り」と「定置網漁」。時期によって2つの漁法を使い分けるのが“大畑流”
大畑のサクラマス漁は、毎年2月下旬から始まり、5月の中旬まで続きます。
「同じサクラマス漁でも、大畑では漁期の前半・後半で2つの漁法を使い分けているんですよ」と、話すのは同組合業務部販売課主任の山本隆さん。2月から4月の上旬までは「ヘラ引き釣り」と呼ばれる1本釣りが主流だといいます。船上から、複数の疑似餌とそれを海中深くに沈めるためのヘラというおもりが付いた釣り糸をたらし、船を走らせながらサクラマスがかかるのを待ちます。釣り竿には鈴が付いており、サクラマスがかかると音が鳴る仕組みです。
4月中旬になり産卵期が近づくにつれ、サクラマスは沖から浅い陸側へと移動してくるため、今度は定置網と漁法を変えるのだといいます。
港と漁場の距離が近いため、鮮度抜群の状態で出荷!
山本さんの案内で、2017年に完成した市場を訪ねました。施設のなかには、この日揚がったばかりの大小のサクラマスがずらりと並び、まもなく始まる入札に向けて仲買人たちが準備に追われています。
「大畑の定置網漁業の特徴のひとつは、漁場が港から非常に近いこと。漁港から100メートルほどの場所に定置網を設置しているので、水揚げ後、鮮度抜群な状態で帰港することができるんです。さらに、水揚げ直後に魚をこうして『氷漬け』にすることで、魚が暴れて傷付くのを防ぎ、鮮度を保ち商品価値を高めているんですよ」。
そう言って、山本さんは、氷漬けしたサクラマスを片手で持ち上げてくれました。つやつやと銀色に輝く身体は頭からしっぽの先までピンと張り、傷もなくビジュアルも超一級品。数年前からは、出荷用のケースに大畑漁業協同組合のサクラマスと明記し、他産地との差別化・ブランド化を図っています。「仲買人を通じて、『大畑のサクラマスはおいしい』と、市場で高く評価されていると聞くと、やはりうれしいですね」。
サクラマス本来のおいしさがダイレクトに味わえる塩焼きがおすすめ!
2月頃に水揚げされるサクラマスは、サイズが大型になるほど脂質含量が多くなります。しかし、青森県産業技術センターの研究により、春の漁期終盤には、サイズの大小による差がなくなることが解明されています。そのため、春のサクラマスは小型でも脂がのり、おいしくいただくことができます。
焼くとふんわりした食感になるため、軽く塩をふってシンプルに塩焼きにするか、ムニエル、ポアレなどに適しています。山本さんによると、「お刺身など生食する場合は、寄生虫感染のリスクを防ぐため、マイナス20度以下で48時間以上冷凍後、解凍していただくのがおすすめ」とのこと。春の味覚、サクラマスをさまざまな調理法で味わってみませんか。
サクラマスを購入できる場所
ファミリーマートさとう、さとちょう、ユニバース、マエダ他、地元のスーパー。※漁の状況により入荷しないこともあるため、事前にご確認ください。
今回お話を伺ったのは
大畑町漁業協同組合
業務部 販売課部長 氣仙正博さん
大畑町漁業協同組合
業務部 販売課主任 山本隆さん
住所 | 青森県むつ市大畑町湊村191 |
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TEL | 0175-34-3321 |