「いちごの旬はいつ?」と聞かれたら、どんな季節を思い浮かべますか?
クリスマスの頃から店頭に並びはじめるいちごは、冬から春にかけて旬を迎えますが、夏の暑さに弱く、国内栽培が難しいため、夏場に流通しているのは輸入品が中心です。
そんななか、青森県では夏も涼しい気象条件を生かして、夏から秋に収穫を迎える「夏秋いちご」の栽培を行なっています。国産いちごが品薄になる端境期に流通する“高品質で貴重ないちご”として、市場でも高い評価を得ています。
夏秋いちごの産地化に向け、全国に先駆けてプロジェクトチームを設置
業務用のケーキやデザートに使われる生のいちごは、年間を通して需要があります。しかし、冬から春にかけて栽培されている「とちおとめ」「とよのか」「さちのか」などの品種は、短日・低温条件下で花芽を分化する特性があります。そのため、夏秋期の栽培は難しく、アメリカなど海外からの輸入に頼っていました。こうしたなかで、製菓業界などから鮮度が良く安全・安心な国産いちごを使用したいという要望が高まり、夏秋期に生産できるいちごの品種開発が次々に進みました。
青森県では、夏も涼しい気象条件を逆手に取り、平成20年度に全国に先駆けてプロジェクトチームを設置。夏秋いちごの産地化に向けた取り組みを始めました。
若手新規就農者が増加中の下北地域。夏秋いちごの“1億円産地”も目前
近年、県内各地で夏秋いちごの産地化が進んでいますが、なかでも生産量が伸びているのが下北地域です。下北地域の夏秋いちご生産者の約半数は30代の若手農業者で、新規就農者も増えています。その結果、下北地域だけで令和元年度の販売額は1億円近くに!
今や“1億円産地”も夢ではない夏秋いちごの一大産地として急成長しています。
そこで、むつ市大畑町で、夏秋いちごの栽培に取り組む「あべファーム」の阿部伸義さんを訪ね、お話を伺いました。
スイーツとの相性抜群の「赤い妖精」
むつ市大畑町にある阿部さんのハウスを訪ねると、葉っぱの間から真っ赤ないちごが顔をのぞかせていました。
「すべて『赤い妖精』という品種です。どうぞ食べてみてください」と、阿部さん。ほおばると、甘さのなかにさわやかな酸味が広がります。ケーキに使用するいちごは、酸味がしっかりしている方が生クリームやチョコレートの甘さを引き立たせるのだとか。いかにもいちごらしい円錐形の形もキュートで、断面も真っ赤。苗に直立性があり収穫しやすく、収量・日持ちに優れた品種だといいます。収穫期は5月~10月。ケーキやお菓子などの業務用・加工用として出荷しています。
夢と情熱を抱いて一念発起! 営業マンから農業の道へ
阿部さんは、もともと自動車ディーラーやOA機器販売会社などで働く営業マンでした。毎日夜遅くまで仕事に追われ、家族との時間がとれない日々。「もっと家族と過ごす時間を大切にしたい。商品を作るところから販売するところまですべてに責任を持ち、お客様に笑顔を届けられるような仕事がしたい」。そんな思いから、5年前に新規就農を決意したといいます。
最初の1年間は、東通村にある先輩農家のもとで研修。その後、独立してビニールハウス1棟からスタートしました。夏秋いちごのニーズの高まりとともに毎年ハウスを増設し、現在ハウスは6棟(約12アール)。そして、さらに新たなハウスを増設中です。
逆境をチャンスに変え“稼げる農業”を目指す!
「霧を伴う冷たい風『やませ』が吹く下北は、夏でもストーブが必要な日があるほど。でも、夏秋いちご栽培にとっては、それが逆に強みになる。他の地域では実現できないことに挑戦できるチャンス!」と、アツく語る阿部さん。夏秋いちごの収益性の高さは、若者にとっても大きな魅力。“稼げる農業”を目指し、年々、新規就農者も増えています。
「下北エリアの夏秋いちご生産者は現在20軒ですが、研修中の若者もいます。仲間を増やすことで産地全体の収穫量アップと地域の活性化を図り、下北の夏秋いちごの知名度向上につなげていきたい」と、阿部さんは抱負を語ります。
「もったいない」精神と探求心が、価値ある商品を生み出す
阿部さんは、丹精込めて育てたいちごが、規格サイズよりも小さい・大き過ぎる・形が良くないなどの理由で廃棄せざるを得ない現状に胸を痛めていました。そこで、2019年にいちご加工会社「A-berry(アベリー)」を設立。下北エリアの農家から買い取った規格外品の夏秋いちごを活用し、商品開発と加工品作りを行なっています。
2019年に発売した「下北夏秋いちごサイダー」は、いちご果汁を15パーセントも使用した贅沢な商品。香料・保存料・着色料不使用で、いちごのほのかな甘さと優しい香りが感じられます。
2020年7月に発売した「苺の雫462゜(シロップ)」は、搾ったいちご果汁に糖分を加えたもの。「牛乳や紅茶に混ぜたり、焼酎やウイスキーに入れてもおいしいですよ。シャーベットやムース、ゼリーなどのスイーツのほか、色合いがきれいなので料理のソースとしても活用できます。醤油とも相性がいいし、カレーの隠し味に使ってもいいですよ」と阿部さんは語ります。
このほかにも阿部さんは、夏秋いちごジュースの試作と、ワインづくりにも挑戦中。ワインは2020年10月頃発売予定です。
事前予約すれば、いちご狩り体験と加工場見学も楽しめる!
「スーパーなどに並んでいるいちごは、店頭に並ぶ頃に赤くなるように完熟前に収穫しているので、完熟いちごの味を楽しみたい方は、いちご狩りがおすすめ」と、阿部さん。「あべファーム」はいわゆる観光農園ではないので、常時収穫体験者を受け入れているわけではありませんが、事前に電話予約すればいちご狩り体験や加工場見学をすることができます。
※阿部さんの携帯電話 090-7322-0950
体験内容の詳細は、「あべファーム with 株式会社A-berry」をご参照ください。
阿部さんによると、生のいちごはヘタを取って冷凍すれば、いろいろなメニューにアレンジできるとか。冷凍のいちごと牛乳をミキサーにかけてスムージーにしたり、冷凍いちごでかき氷を作りいちごシロップと練乳をかければ、夏秋いちご尽くしのプレミアムかき氷の完成です。
ぜひ、下北地域の夏秋いちごの魅力にふれてみてください。
A-berry会社紹介 動画
生果の夏秋いちごを購入できる場所
むつ市
- マエダ本店
- スーパーエチゴヤ
※ただし、入荷がない日もございますので事前確認をお願いします
夏秋いちごの加工品を購入できる場所
むつ市
- マエダ本店
- スーパーエチゴヤ
- 八戸屋
- フィッシングハウス キヤ
- むつ市下北観光物産館「まさかりプラザ」
※店舗によって在庫がない場合もございますので事前確認をお願いします
弘前市
- 弘前れんが倉庫美術館内「CAFE & RESTAURANT BRICK」
インターネット販売
今回お話を伺ったのは
「あべファーム」・「株式会社A-berry」阿部伸義代表
住所 | 青森県むつ市大畑町下河原133-1 |
---|---|
TEL | 090-7322-0950 |