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産地情報 ~海と陸が織りなす絶景・リアス式海岸が育む、極上の「泊(とまり)うに」~ (2022年6月)

海と陸が織りなす絶景・リアス式海岸が育む、極上の「泊(とまり)うに」

青森県で主に漁獲されるウニは、キタムラサキウニとエゾバフンウニの2種類。特に、青森県産のキタムラサキウニは、その繊細な味わいと風味に定評があります。青森県の東岸部・六ヶ所村泊地区にある泊海岸は、県内では珍しいリアス式海岸。独特の地形によって育まれた海産物は、古くから地域の人々の暮らしを支えてきました。旬を迎えた「泊うに」の魅力を探るために、泊漁業協同組合を訪ねました。

多種多様な海産物を育む、恵みの海

「ここは、今から約1,600万年前の海底火山の溶岩や海蝕(かいしょく)によってつくられたリアス式海岸なんです」。そう話すのは、泊漁業協同組合総務課の吉岡弘光さん。

リアス式海岸

磯を歩くと、独特の形をした岩礁が広がっています。

「海底にはウニが好む起伏に富んだ地形が広がっていて、目の前の山からミネラルたっぷりの水が海に注ぎ込み、ウニのえさとなるコンブやワカメを育くんでいるんです。足元の岩に生えているのは、フノリ、ヒジキ、コンブ・・・。ここは、豊かな海藻が育つ恵みの海なんです」と、吉岡さんは語ります。

フノリ
フノリ

ヒジキ
ヒジキ

コンブ
コンブ

本州最北東端の下北半島の尻屋崎から八戸までの約100キロメートルの海岸線のうち、このような岩礁地帯が広がるのは、泊の周辺だけだといいます。
「向こうに見えるのは、中山崎。見晴らしが良いことから江戸時代に砲台があった場所です。あそこから白糠地区まで、直線距離にして約4キロメートルが泊リアス式海岸。ここは、地形的な条件に恵まれた希少な場所なんですよ」。

海底の地形を熟知したベテラン漁師たちによるウニ漁

泊地区でとれる「泊うに」は、約8割がキタムラサキウニで、2割がエゾバフンウニです。6~7月は、エサとなる海藻が最も生い茂るため、栄養豊富な海藻をたくさん食べたウニは身入りも良く、「泊うに」はこの時期、旬を迎えます。
同漁協では、天候や潮の状況を見ながら、この期間に複数回の解禁日を設けています。資源保護のため、解禁日1回あたりの日数は1日から2日間程度、さらに、ウニ漁に出られるのは、同組合員約750人のうち1世帯につき1人まで、人数を制限することにより貴重な資源を守っています。

いよいよ待ちわびたウニ漁の解禁日を迎えると、漁師たちはウェットスーツを着用し、シュノーケル、水中眼鏡、足ヒレをつけていっせいに海に潜ります。ウニ漁は、波打ち際から約50メートル沖までの範囲で行われます。最もウニがとれるのは、コンブやワカメ、チガイソなどの海藻が生い茂る水深5メートル以内の場所だといいます。

「私も海に潜るんですが、ウニを見つけるためには海底の地形が頭に入っていないといけません。ウニは、岩と岩の間の溝などに10個、20個とかたまっているので、その場所をいかに見つけられるかがポイントです」。

キタムラサキウニ エゾバフンウニ

地域の家庭で大切に受け継がれてきた食文化「塩ウニ」

昔から泊地区では、とったばかりのウニの身を塩水に浸し、ザルに上げて一夜漬けにする食文化がありました。こうすることで余分な水分が抜けるため、旨味が凝縮するだけでなく、冷蔵庫が普及していなかった時代、生ウニに比べて日持ちしやすいという利点もありました。

六ヶ所村は、江戸時代からヒバの生産地として知られ、1935(昭和10)年~1964(昭和39
)年まで、森林鉄道が活躍していました。豊富な森林資源に恵まれていたことから、泊の漁師たちは、ヒノキ樽の内側に乾燥したコンブを敷きつめ、塩ウニを入れ木のふたで密封し、内陸部で米や野菜などと物々交換したという記録も残されています。

六ヶ所村の1901(明治34)年の磯漁業に関する資料によると、泊の塩ウニは、県内の他の魚の取引価格と比較しても、非常に高値で取引されていたことがわかります。
地域の森林資源を生かし、貴重な磯の恵みを保存するために人々が生み出した知恵と工夫は、この地に伝わる宝物。六ヶ所村立郷土館ではウニ樽を展示しており、当時の人々の暮らしに思いを馳せることができます。

その後、1965(昭和40)年頃になり、冷蔵庫が普及すると、塩ウニは樽ではなく牛乳瓶に入れて販売するようになります。ほとんどが個人販売か物々交換で、主に七戸、十和田方面で行われたといいます。時代とともに容器は変わっても、塩ウニは泊の人々にとって、なくてはならない生活の糧でした。

この地に伝わる伝統製法で塩ウニを商品化

漁協の女性たちが、キタムラサキウニと、エゾバフンウニの殻をむいて試食させてくれました。栄養豊富な海藻を食べて育ったキタムラサキウニは、びっしりと身が入り、上品な甘味とまろやかさが感じられます。エゾバフンウニは、身の色が濃く、口の中に濃厚な旨味が広がります。磯の香り漂う、泊の海が育んだ極上の味です。

試食させてもらったエゾバフンウニ
エゾバフンウニ

「県内各地にウニの産地がありますが、その土地に生えている海藻によって、ウニの味が変わると言われています。そういう意味では、ワインと似ているかもしれませんね」と、吉岡さんは笑顔で語ります。

「家庭で殻付きのウニをさばく時は、海水の代わりに1リットルの水に35グラムの塩を入れてください。その際、水道水は1回煮沸するか、市販のミネラルウォーターを使うのがおすすめ。ぬるい水で調理するとウニが溶けてしまうので、塩水は必ず冷蔵庫で冷やしてから使ってください。購入後、すぐに食べない時は、殻付きのウニであれば冷蔵庫で3、4日もつので、口の部分を上にして保存してください」と、吉岡さんはアドバイスしてくれました。

現在、同漁協では、「泊うに」を使用した塩ウニの瓶詰商品を開発中です。試食させていただくと、まるでとれたてのウニのように身がぷっくりとふくよかで、口の中で広がる濃厚なウニの甘みと磯の香りがたまりません。ほどよい塩分によってウニの旨味がぎゅっと凝縮しており、青森のおいしいご飯や、地酒とも相性が良さそうです。この地に伝わる昔ながらの製法にこだわり、泊の物語が詰まった極上の逸品。2023年の販売を目指しています。

開発中の「泊うに」を使用した塩ウニの瓶詰商品
開発中の「泊うに」を使用した塩ウニの瓶詰商品

「泊地区は、天然のワカメなど資源が豊富な場所でありながら、利用されていないものがたくさんあります。泊うにをきっかけに、地域の特産品をもっとPRしていきたいですね」と、吉岡さんは抱負を語ってくれました。

泊海岸は、近年、「泊のトトロ」と呼ばれSNSなどで話題を呼んでいる「弥次郎穴」や、横向きになった柱状(ちゅうじょう)節理(せつり)「タタミ岩」、潮吹き穴「ぼっとあげ」など、変化に富んだ景観が続き、見どころがたくさん。村内の飲食店で旬の「泊うに」を堪能した後は、泊海岸のトレッキングを楽しんでみませんか。

弥次郎穴(泊のトトロ)
弥次郎穴(泊のトトロ)

村内で「泊うに」を食べられる場所

武寿司

TEL: 0175-77-2054

文化食堂

TEL: 0175-77-2031

※海の状況などにより、提供できないこともあるので事前に要確認

泊漁業協同組合総務課 吉岡弘光さん

今回お話を伺ったのは

泊漁業協同組合 総務課

吉岡 弘光さん

泊うに公式ブランドサイト


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