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産地情報 ~人気上昇中の赤身たっぷりな和牛「とわだ短角牛」~ 十和田市・十和田八甲田日本短角牛推進協議会 (2024年12月)

人気上昇中の赤身たっぷりな和牛「とわだ短角牛」

十和田市で育まれている「とわだ短角牛」は、和牛の中でも赤身の割合が多い日本短角種です。
和牛といえばサシ(霜降りの脂肪)が入る黒毛和種が有名で、流通している和牛のほとんどを占めていますが、国内シェア1%以下という希少品種の日本短角種は脂身が少なく、さっぱりとした味わいが特徴的で、健康志向の高まりとともに、近年注目を集めています。
また、「とわだ短角牛」は、八甲田山麓の豊かな自然の中で、輸入穀物主体の飼料に頼らず、地産の牧草やトウモロコシを主食として伸び伸びと育った青森ならではの牛です。食味はもちろん、畜産の持続可能性の向上や環境負荷の低減といった面でも、魅力にあふれています。

地元・南部牛がルーツ、東北生まれの和牛

「とわだ短角牛」は、藩政時代、南部藩の沿岸から内陸へと続く「塩の道」で、塩をはじめとする物資を運んだ南部牛がルーツです。
その南部牛と輸入品種を掛け合わせた日本短角種は、日本固有の和牛として認定された4品種(黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種)の中で唯一、東北地方で誕生したもので、毛色が赤茶色であることから「赤べこ」とも呼ばれています。
脂肪が少なく、赤身には旨味成分であるグルタミン酸やイノシン酸が豊富に含まれているのが特徴で、噛むほどに旨味が広がります。

輸入穀物飼料を控え、地産の餌で伸び伸びと育つ

和牛は脂肪を交雑させて霜降り用にするため、穀物主体の配合飼料で飼育することが一般的です。しかし、「とわだ短角牛」は配合飼料を極力抑え、牧草やサイレージ(発酵飼料)化したトウモロコシなどを食べて育ちます。

十和田八甲田日本短角牛推進協議会・幹事の畔柳正さんは、「牛は草食動物。特に短角牛は穀物類を食べなくても、牧草や飼料用作物だけで十分に肉を作る能力があるんです」と言います。

十和田八甲田日本短角牛推進協議会・幹事の畔柳正さん
十和田八甲田日本短角牛推進協議会・幹事 畔柳正さん

「とわだ短角牛」は、雄牛は牛舎で、雌牛は放牧で、いずれも皮下脂肪が厚くならないよう、きめ細やかな管理の下で飼育されています。

「とわだ短角牛」は皮下脂肪や筋間脂肪は厚くならないよう管理されている
「とわだ短角牛」は皮下脂肪や筋間脂肪は厚くならないよう管理されている

畜産の可能性を広げる!食味だけではない「とわだ短角牛」の魅力

「とわだ短角牛」は、畜産業の持続可能性を向上させうる品種としても注目されています。
畔柳さんによると、十和田市内で「とわだ短角牛」を生産・肥育している畜産家は2軒(2024年11月現在)のみですが、いずれも資源循環型の畜産を実践。具体的には、牛が牧草を食べ、その排泄物が堆肥となって新たな牧草を育てる、という循環を作り出しています。
さらに、豆腐の製造過程で排出される大豆残さなど、地域で生じる未利用資源をエコフィードとして飼料に活用する試みも行われており、環境負荷の低減に貢献しています。

漆畑善次郎さん 成田利男さん
「とわだ短角牛」を生産・肥育している畜産家
農場と焼き肉店を運営している漆畑善次郎さん(左)
2019年短角牛品評会で最優秀賞を受賞した“短角牛名人”成田利男さん(右)

日本の畜産業は飼料の多くを輸入に依存しており、昨今の円安や国際情勢による原材料費の高騰で、多くの畜産家が経営難に直面しています。その点、輸入飼料への依存度が低い「とわだ短角牛」は経営の安定化に寄与します。
また、脂肪量が少ないことは歩留まりの良さ(可食部の肉量が多いこと)につながり、生産者、加工・販売業者、消費者の全てに経済的メリットをもたらしています。

畔柳さんは、全国に40万ヘクタールあるといわれる耕作放棄地を牛の放牧に活用することで、荒れ地の復元、獣害の抑制、地域農業の活性化につながる可能性を指摘します。「『とわだ短角牛』は畜産を身近な存在にしてくれるストーリーを持つ牛だと自負しています」と語ります。

牛舎で飼育されている「とわだ短角牛」
牛舎で飼育されている「とわだ短角牛」

煮込んでも!焼いても!赤身の味わいを満喫する食べ方

旨味たっぷりの赤身肉である「とわだ短角牛」は、様々な調理法で楽しめます。カレーやシチューなどの煮込み料理では、肉の味わいを存分に楽しめるほか、淡白でありながらもコクのある脂の風味が際立ちます。

焼いて食べるのがシンプルで美味しいですが、焼く際は脂が落ちて肉が乾燥してしまう網焼きより、グリル調理がおすすめです。
畔柳さんが教えてくださったお気に入りの食べ方は、「とわだ短角牛」を生産する漆畑畜産直営の焼肉店「焼肉牛楽館」で提供している「ブロック焼き」。ブロック肉の表面を鉄板でまんべんなく焼いて旨味を閉じ込めた後、スライスしてローストビーフ状に仕上げる調理法です。
「肉自体に旨味があるのでハンバーグもおすすめですね」と畔柳さん。
また、十和田市民のソウルフード「十和田バラ焼き」でいただくのもお忘れなく!

「とわだ短角牛」のローストビーフ
「とわだ短角牛」のローストビーフ

おわりに

地元にルーツを持ち、地産の餌で育った「とわだ短角牛」は、「地域に根差した、文字通り『青森のうまいもの』の特徴を持った食材」と畔柳さんは評価します。しかし、赤身肉ブームと言われる中でも、その認知度はまだ十分とは言えないのが現状で、「食材は舌で味わうだけでなく、環境や生活への影響を考えて『頭で食べる』視点も必要でしょう」と提言されています。

「とわだ短角牛」の未来に期待をする畔柳さん
「とわだ短角牛」の未来に期待をする畔柳さん

「とわだ短角牛」への需要が高まることで、生産から加工販売、消費までの好循環が生まれ、やがては社会課題の解決につながっていくことが期待できます。まずは健康的で美味しい赤身肉を存分に味わってみてはいかがでしょうか?

「とわだ短角牛」を購入できる場所

漆畑畜産直営 牛楽館
Webサイト https://gyurakukan.shop-pro.jp/

「とわだ短角牛」を食べられる場所

漆畑畜産直営焼肉店「焼肉牛楽館」
住所 青森県十和田市東三番町1-27瀬戸ビル2F
TEL 0176-58-7731
Webサイト https://urushihata-chikusan.com/

今回お話を伺ったのは

十和田八甲田日本短角牛推進協議会 幹事 畔柳正さん

十和田八甲田日本短角牛推進協議会 幹事
畔柳 正 さん


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