メロン産出額全国3位を誇る、一大産地・つがる市。同市の木造地区を中心に栽培されている「つがりあんメロン」の出荷が6月上旬から始まります。
「津軽で生まれ、津軽で育ったメロン」の意を冠した一級品。今回はその中でも最高級品種「アムさん」の収穫を間近に控えた生産現場を訪ね、作り手のみなさんから“緑の宝石”の魅力を伺いました。
全国有数の産地発ブランド「つがりあん」
つがる市で主にメロンが栽培されているのは、屏風山と呼ばれる砂丘地帯。水はけがよく、昼夜の寒暖差が大きいことから、ここで育つメロンは糖度が高く芳醇な香りに仕上がります。2022年の国の調査によると、青森県は全国5位の生産量。つがる市の作付面積は県全体の7割以上を占め、産出額28億7000万円と、市町村別では全国3位を誇ります。
津軽一円の青果を取り扱う卸売市場「弘果弘前中央青果」では、一元的な生産指導により栽培された農産品を「つがりあん」ブランドとして展開。2024年現在で27品目ある中、登録第1号となったのがメロンでした。つがる市を中心とした津軽産メロンをブランド化しようと、1997年に生産者で組織する青森オリジナルメロン生産連絡協議会が発足。それ以来、作り手の熱意と長年の取組によって「つがりあんメロン」の美味しさが認知されるようになりました。
太陽を浴びて完熟・「アムさん」
「つがりあんメロン」の収穫は6月上旬からスタート。収穫期が異なる6品種が9月下旬までリレー出荷されていきます。6品種のうち「ホームビレンス」「アーバンデリシャス」「スウィートルビー」「ハニーゴールデン」「レノン」の5品種はトンネル栽培。これらに先駆けて最も早く出荷される「アムさん」のみ、ビニールハウスで栽培されます。
「アムさん」はアムスメロンを改良して誕生した「ユウカ」という品種のメロン。太陽の光をいっぱい浴びておいしく実るという意味で「アムス」と「さん(SUN=太陽)」から名付けられました。
「アムさん」の特徴は何と言っても完熟で出荷される点。一般的なメロンは玉が固い場合は食べごろを迎えるまで常温保存する「追熟」が必要ですが、「アムさん」はすぐに食べることができます。完熟になるまで畑で育ち、食べて一番美味しいタイミングで収穫。糖度15度以上を収穫基準とする「つがりあんメロン」の中でも、「アムさん」の収穫基準糖度は16度以上。完熟ゆえに果肉は柔らかく皮際ギリギリまで味わうことができ、とろけるような甘さと香りは実に上品です。
畑で育つ「アムさん」の果皮は緑がかっていますが、熟すと鮮やかな黄色に。生産者の阿部祐一さんは「日光をたっぷり浴びないと黄色くならない。最後(収穫直前)にならないと色付かないのが難しいところ」と話します。
果実にまんべんなく日が当たって色付きがよくなるように玉回しもするとか。完熟で出荷するためツルが取れやすく、傷物にもなりやすい品種でもあり、細心の注意を払い育て上げます。
種まきから収穫まで約4か月。発芽して育った苗を畑に定植するのに約30日ほどかかり、それ以降は農作業のスピードが一気に上がります。「ツルの育ちや花の咲き頃は天候で一気に変わり、作業が間に合わなければメロンの成長に置いていかれる」と話すのは青森オリジナルメロン生産連絡協議会の渋谷充会長。
メロンの交配は手作業に比べて品質が上がるとされるミツバチで行い、それが「つがりあん」の栽培条件にもなっていますが、気温が低ければミツバチが巣箱から出ず、高すぎれば死んでしまいます。異常気象に見舞われる昨今は、記録的な高温でミツバチがほぼ全滅してしまった年も。渋谷会長は「毎年違っていて思ったようにはいかない。メロンづくりは、好きでないとできない」と、苦笑いしつつ苦労を紹介してくれました。
抜群の糖度、芳醇な香り。津軽ならではの贅沢
6月初旬、初競りを控えた阿部さんの園地で「アムさん」の試し割りが行われると聞き、現地にうかがいました。弘果の担当者のみなさんも集まり、今年の出来栄えをチェック。この日に試食した「アムさん」の糖度は16.6度と文句なしの仕上がりで、味わいも抜群!試食でいただいたメロンは早熟のものだったため、阿部さんは「実際に出荷されるものはもっと実がつまっておいしいよ」と胸を張ります。
取れたての「アムさん」の表面に鼻を近づけると、まるでフローラル系の香水のような芳香が。弘果の担当者さんによると実際に、香り成分を抽出したフレグランスの開発も検討されたといいます。収穫してしばらく経つと、さらに甘い香りを発します。味覚はもちろん、嗅覚でも楽しめるのが「アムさん」メロン!
青森、津軽と言えばイメージが強いのはやはりリンゴ。阿部さんと同じく「アムさん」を生産する松橋尚子さんは「津軽のリンゴは食べるけど、津軽のメロンは食べたことがないという人が結構いる。とにかく、ぜひとも一度は食べてもらいたい」と話します。
阿部さんも「アムさんの黄色さを見て『これはなんだ』と言う人がいたが、一度味わってもらうと『これしか食べたくない』となった」とニヤリ。弘果商事部マーケティング室長の鶴田章さんは「地元・津軽のおいしいものを、ブランド化を通じてもっと多くの人に知っていただきたい」とうなずきます。
「アムさん」をはじめとする「つがりあんメロン」について、「メロンはいろんな食べ方があるが、やはり生で味わってほしい」と鶴田さん。甘みを引き立たせるためには冷やしすぎは禁物で、食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れるくらいが良いそうです。
また、「アムさん」は完熟状態で出荷されるため日持ちはしません。「食べごろを逃さないように買ったらすぐ食べてほしい」と阿部さん。賞味期限は収穫から4日で、物流のリードタイムを考えると出荷地域は関東圏が限界となります。存分に味わえるのは地元ならではの贅沢さ。
津軽の夏を味わう、気品ある甘さの「つがりあんメロン」。未経験の方はぜひご賞味ください!
「つがりあんメロン」を購入できる場所
- 青森県内スーパー
- 百貨店
- ECサイト( RABオンラインショップ、楽天市場、うまいもんドットコム、東急ストア通販、ベルーナ通販など)