“極甘”の希少トウモロコシ・新郷村特産「郷のきみ」

十和田湖の東側、自然豊かな山間に位置する新郷村。青森県での酪農発祥の地であるこの村に、県内でもなかなか出回らない希少なトウモロコシがあります。その名も「郷(さと)のきみ」。生で食べられるほどの、フルーツのような甘さが驚きの逸品です。美味しさの秘密は、有機質豊富な土壌や昼夜の寒暖差といった村特有の環境と、徹底した栽培管理と出荷基準にあります。

“極甘”の希少トウモロコシ・新郷村特産「郷のきみ」

寒暖差と肥沃な土壌、トウモロコシ栽培の好適地

三ツ岳と大駒ケ岳からなり、東北百名山にも数えられる戸来岳。そのふもとに広がる冷涼な高原地帯で郷のきみは生産されます。ここでは7月ですら夜になると肌寒さのあまりストーブをつける世帯が見られるほど。青森県内では「きみ」と呼ばれるトウモロコシですが、糖を作る光合成を昼間にのみに行い、夜間は日中で得たエネルギーを糖類に変換する性質があります。

蓄えられる糖の量は気温が低いほど多くなるため、昼夜に寒暖差があることは良品のトウモロコシが育つ条件の一つ。その点、夏場は朝晩の気温差が日によっては20度も開くという新郷村の高原地域は、うってつけの場所です。さらに長らく酪農が盛んであった歴史から、有機質をふんだんに蓄えた肥沃な土壌も広がっています。絶好の環境で育つ郷のきみは甘さが最大限まで引き出され、その糖度は、なんと完熟メロンをも上回る18度以上を誇ります。

「1/1000」も許さぬ品質へのこだわり

  • 収穫時期は、触って見極め、一番上のとうもろこしだけを収穫

恵まれた環境だけでは、極上のトウモロコシは育ちません。郷のきみの美味しさには、生産者のたゆまぬ努力とこだわりが宿っています。「新郷村農業後継者の会きみ部会」により、2009年からの試験栽培を経て本格的な生産が始まった郷のきみ。2021年からは「新郷村郷のきみの会」として独立し、再スタート。その栽培管理と収穫、出荷には非常に高い基準を設けています。
収穫するのは株の一番上にできた実のみ。糖分が詰まったタイミングを逃さぬため、朝露のある日出前に行われます。そしてすぐさま市場を通さず小売店に出荷。トウモロコシは鮮度で食味が大きく変わります。郷のきみのこだわりは「畑から店頭に並ぶまで3時間以内」。そのため販売場所は村内の道の駅や近郊のスーパーに限定されます。こうして栽培から出荷まで、非常に高い品質管理が求められるため、生産が認められている農家は2024年8月現在でわずか3軒のみ。出荷本数は年間2万5000本程度にとどまります。これらが、郷のきみがプレミアムである所以です。

  • 郷のきみ生産者の中平将義さん

生産者の一人、中平将義さんは2023年から新郷村郷のきみの会に入会。「『これ売らないともったいなくない?』という出来のものでも、納得できないなら出荷はしない。やりすぎなくらい妥協がないんです」と愚直なまでの品質管理に苦笑しつつ「仮に1000本出荷した中に不良品が1本も交ざることはない。生産者のこだわりが郷のきみの信頼につながっているのも確かです」とうなずきます。

「人生が変わるほどの、“世界一”の野菜を」

  • 先端まで粒がびっしり

郷のきみの園地を案内してくださった中平さん。「トウモロコシの栽培にはとにかく水が重要。水分がないと全く育ちません。郷のきみは昼夜の寒暖差があるから甘いとはよく言われますが、新郷って実は水がめっちゃうまいんです」と美味しさの秘密を教えてくれました。戸来岳をはじめとする緑豊かな山々から注ぐ恵みの水をふんだんに取り込んだ郷のきみ。中平さんがその場で刈り取った実からは、皮をむくなり、水がびしゃびしゃとあふれ出てきます。実に含まれた水分量がこれほどとは思わずびっくり。粒も先端までびっしりと並んでいます。
「実の先まで粒を詰められるのは技術力」と胸を張る中平さん。そんなもぎたての郷のきみを「生でいっちゃってください!」と勧められるままにかぶりつくと、フルーツのような味わいに驚き!とれたてが生で味わえるほどのトウモロコシなので、その甘さは感動ものです。

  • 笑顔を見せる中平さん

プレミアムトウモロコシの魅力を発信しようと、大手ネット通販や高級レストランでの取り扱いなどに乗り出した新郷村郷のきみの会。東京三ツ星フレンチ店のシェフの目にとまり、メニューに採用するといった成果も出ており、少数精鋭ゆえに他産地ではまねできないこだわりが徐々に認められてきています。「世界一美味しい野菜を作ろうと思ってやっている。ぜひ一度食べてほしいです」と中平さん。ニッコリとおどけながら「郷のきみは『君』の人生を変える『きみ』になるはず。実際に私も人生を変えられました」とも。

  • 新郷村農業委員会の服部奨さん

新郷村の自慢である郷のきみですが、生産者不足は慢性的な課題。新郷村農業委員会の服部奨さんは「農家さんには声をかけているのですが、どうしても生産するために求められるものが大変だと敬遠されます」と実情を話します。数年前まで郷のきみ自体を知らなかったという服部さんですが、初めて食べたときの美味しさに驚き「自分も頑張らないといけない」と決心したそう。「これからも村の特産品として売っていきたい。生産量を増やしていけるよう取り組み続けます」と、力を込めていました。

重要:すぐに食べること!

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郷のきみのおいしい食べ方は、なんと言ってもできるだけ早く食べること!トウモロコシは収穫後も糖分を消費していき鮮度が下がっていくためスピード勝負。茹でる場合はたっぷりの沸騰したお湯で5分程度、電子レンジで調理する場合は600Wで4分程度がおすすめの加減だそうです。保存する場合はなるべくすぐに茹でて冷蔵庫へ。茹でられない場合は皮つきのまま、ひげの部分を上にして立てた状態で冷蔵庫の野菜室で保存してください。

郷のきみは8月初旬から9月下旬まで出荷されます。店頭に並ぶと瞬く間になくなってしまうという、希少なトウモロコシ。ウェブでも販売しているため、チャンスをうかがってご賞味ください!

「郷のきみ」を購入できる場所

今回お話を伺ったのは

新郷村郷のきみの会

中平 将義さん


新郷村農業委員会主査

服部 奨さん


 (2024年8月)

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