国内有数の漁港として知られる八戸港。イカやサバの水揚げで有名なこの港は、実は「船凍キンメダイ」の水揚げ量で日本一を誇っています。
八戸市から約2400キロ離れた北太平洋の天皇海山海域で獲れたキンメダイを船上で急速冷凍することで、鮮度を保ったまま港に届けることができます。この海域で漁を行っているのは、世界でも八戸港所属の大型船2隻のみ。
まだまだ知られていない船凍キンメダイの魅力をご紹介します!
世界で八戸の2隻だけ!天皇海山海域で漁獲
キンメダイは、その名の通り金色の大きな目と、鮮やかな赤の体色が特徴の魚。お祝いに向いた姿や味の良さから、高級魚として扱われています。
国内漁場として関東地方の沿岸部を中心に漁獲されるキンメダイですが、八戸港で水揚げされる船凍キンメダイの産地は天皇海山海域。
ハワイ諸島から北西に位置する、日本の古代天皇の名を冠した海山が連なる公海です(ちなみに海山群の命名者はアメリカの海洋学者・ディーツ)。
開洋漁業株式会社(以下、開洋漁業)では昭和60年代から、この遠洋での漁業を本格化させました。当時は、この海域で獲れるクサカリツボダイを目当てに世界各地から漁船が押し寄せていましたが、漁獲量の増加に伴い資源量が減少。
この環境変化で資源量を増やしたキンメダイも漁獲が進み数を減らしたことで年々操業隻数が減り、現在は開洋漁業と同市のもう1社の漁船のみ、資源管理を遵守しながら操業を続けています。
冷凍技術の発達で獲れたてのおいしさキープ
「一本釣りで獲り、鮮魚として出荷される『釣りキンメ』に比べると、冷凍ものはどうしても下に見られていました」と話すのは、開洋漁業代表取締役社長の河村桂吉さん。
船凍キンメダイは長らく加工用として扱われてきましたが、近年の冷凍技術の発達により、現在流通されているものは生食でもお勧めできるおいしさといいます。
天皇海山海域のキンメダイは水深350~600メートルの深海に生息。水温は12~13℃と低く、潮流が速いことから、身質が締まって脂も乗っているのが売りです。
さらに水温や潮流といった生息環境は年間を通じてほぼ変動せず、漁獲量が安定しているのも特徴。漁獲したキンメダイはサイズごとに選別された後、すぐさま船内にて-40℃で急速冷凍され、フレッシュなまま港へ届けられます。
長らく、八戸港の代名詞だったイカやサバは近年、漁獲量が激減。
その中で、ここ数年で水揚げ量が日本一にまでなった船凍キンメダイが港の取引高を下支えしています。
キンメダイの消費地は関東以西が主で、東北・北海道の食文化には深く根差していなかった魚ですが、食味が良く、水揚げ量も安定してきたことから、八戸港の新たな目玉にしようと流通業者、加工業者も注目し始めました。
生食も美味。調理法はお好みで
皮目が赤く白身であることから見た目も良いキンメダイ。天皇海山海域産は脂がさらっとして上品な味わいであり、魚特有のくせや臭みがなく、生食でもおいしく食べられるといいます。
食べ方としては、煮付けや焼き魚が定番ですが、本来の味が出るのはお刺身。湯引き刺しやしゃぶしゃぶといった味わい方はもちろん、河村さんのおすすめは、皮の香ばしさで身の風味が引き立つ炙り刺し。
焼き魚にする際もウロコを残すことで、パリパリとした食感が楽しめて、なによりキンメダイならではの美しい赤い皮目で見た目が華やぎます。
「皮をはいで調理する人が多いですが、ぜひ残して食べてみてほしい」と河村さん。
さらに食べ終わった後の頭や骨などのあらを炊くと絶品のスープに。うどんや雑炊に仕立てると、最後までおいしくいただけます。
調理法を選ばないのもキンメダイの魅力で、「使い勝手がよく、どんな料理にでも合う。自分好みの食べ方ができる」と河村さん。
キンメダイを手軽な形で食卓に取り入れてもらいたいと、自社加工の冷凍魚を開発し、これから本格的に売り出そうとしています。
缶詰でもっとお手軽に楽しもう!
より簡単にキンメダイを楽しんでもらおうと、2023年12月からは缶詰の売り出しがスタート!
「水煮」「しょうゆ煮」「オリーブオイル煮」の3種類があり、そのまま食べておいしいのはもちろん、水煮やしょうゆ煮は炊き込みご飯、オリーブオイル煮はサラダに仕立てるとお手軽な絶品料理に。
河村さんのおすすめメニューは、水煮を使った八戸ならではのせんべい汁。昆布だしとめんつゆで味を調え、せんべい汁用の南部せんべいを加えるだけで完成です!
さらに「個人的に一番好きなのは…」という食べ方が、温かいごはんに水煮の身を乗せて、その上から醤油とマヨネーズをお好みで!「あっという間にお茶碗2杯いくよね!(笑)」と教えてくださいました。
これは聞くだけでやってみたいですよね!
「キンメダイは高いものという認識を多くの人が持っていますが、決してそうではない。これから出回る量が増え、どんどん手に入りやすい食材になっていくはずです」と河村さん。
その中で「天皇海山海域産」「八戸港水揚げ」をおいしさの目印として確立させ、差別化していきたいと展望しています。
ブランド化に向けては、以前、冷凍原魚を購入した業者から「背中に傷があった」という報告があったことをきっかけに、箱詰めした担当者を照会できるバーコードを付けるなど、品質管理も徹底。より一層、良質な商品供給に努めているそうです。
そんな船凍キンメダイの今後にぜひご注目ください!
船凍キンメダイを購入できる場所
各種加工品
八戸市内のスーパー
今回お話を伺ったのは
開洋漁業株式会社 代表取締役社長
河村 桂吉 さん
住所 | 青森県八戸市大字湊町字下条21 |
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Webサイト | https://gyosapo.ryoushi.jp/kaiyou-gyogyo/ |