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産地情報 ~「町の魚」ブランド化へ、階上町のアブラメ(アイナメ)~ 階上漁業協同組合 (2024年10月)

「町の魚」ブランド化へ、階上町のアブラメ(アイナメ)

アブラメという魚をご存じですか?地域によってさまざまな呼び名がありますが、一般的にはアイナメといわれる魚。漢字では「鮎並」と書くようにアユのような姿や“ぬめり”を持ち、また「アブラ」と付くのは油を塗ったような光沢があることが理由とされています。白身の高級魚であるアブラメを「町の魚」に制定している階上町では、地域ブランド化の動きが本格化しています。

調理法はなんでもOK!日本中で愛される魚

アブラメは北海道から九州まで、日本各地の沿岸でみられる白身魚。岩礁性の沿岸部、水深50メートル程度までの藻が繁茂する浅場に、群れを作らず縄張りを持って生息するのが特徴。エビやカニなどの甲殻類をはじめ、小魚や多毛類(ゴカイやイソメ)などをエサにしています。

身の歯ごたえはプリっとしており、味わいは淡白ながらも上品な甘みと旨みがあります。高タンパクで低脂肪、味にくせがないため、生食はもちろん、煮ても焼いても揚げてもおいしく食べられます。和洋中を問わず、調理法を選ばない優秀な食材です。

アブラメは地方によって様々な呼称があり、一般的に「鮎並」と書くのは姿の特徴だけでなく、アユと同じように縄張りを持つことも由来するともいわれます。青森県のほか、大阪府、香川県、徳島県などの周辺では「アブラメ」、北海道では「アブラコ」と呼ばれ、これには「油」のような光沢のほか、「脂」がのった魚という意味も含まれるとの見方があります。愛媛県や広島県辺りでは「モミダネウシナイ」といった面白い呼び名もあり、これは翌年にまくための種もみまで食べてしまうほどのおいしさが由来とか(諸説あり)。一般名のアイナメには「愛な魚」との表記もあり、さまざまな呼称から、古来より多くの人々に愛されている魚だということが分かります。

アブラメ

活け締めでさらにおいしく!「階上アブラメ」

階上町では通年でアブラメの水揚げがあり、昔から盛んに食されていたことから、1994年に町の魚として制定。2018年に町と八戸水産高校の協定をきっかけにブランド化へ漕ぎ出し、2020年には行政と地元の漁業関係者など産学官が連携した推進協議会「はしかみブランドプロジェクト CompAss(コンパス)」が設立されました。そして2024年、全国的に階上沖産アイナメを認知してもらおうと、ブランド化のための具体的な統一基準を設け、「階上アブラメ」として翌2025年夏デビューを目指す―、という動きを見せています。階上町では初のブランド水産品になるとあって、関係者のみなさんの熱量は高まっています!

「階上アブラメ」の選別基準

  1. 旬である5~7月に水揚げ
  2. 体長が35センチ以上
  3. 水揚げ後すぐに活け締めしたもの

★特に重要なのが、活け締めです!

活け締めする道具と大きさを測るスケール
活け締めする道具と大きさを測るスケール

アブラメは鮮度の落ちやすい魚で、野締め(漁獲後の自然死)のものは身の色や風味が短時間で悪くなってしまいますが、獲れたてを船上で締めた後、臭みや腐敗の原因になる血を抜くことで生臭みがなくなり、身が真っ白なまま品質を長持ちさせることができます。魚の身にはATPという旨みの元になる成分が含まれますが、処理の有無でその含有量も大きく変わってくるのです。

活け締め研修会風景
活け締め研修会風景
実を割ると水分が溢れる
アブラメを活け締めする様子

活け締めしたアブラメについて、ブランド化に取り組む階上漁業協同組合・小渡部会理事の長根義則さんは「獲れてから4~5日後までおいしく食べられます」と紹介。切り身を急速冷凍させ真空パック詰めに加工したものもあり、一番脂がのった6月獲れのアブラメをお正月にそのままの風味でお届けできるよう研究中だとか。

階上漁業協同組合・小渡部会理事の長根義則さん
階上漁業協同組合・小渡部会理事の長根義則さん

3.11で環境変化、ブランド化への思い

階上沖でのアブラメ漁は、海底30メートルほどの岩場を探っていきます。漁に用いられるのは、かごや「てんびん」と呼ばれる釣りで使用される道具。「何を使って獲るかはそれぞれの漁師によって違いますね」と教えてくれたのは、長根さんと同じくアブラメのブランド化を担う漁師の南正美さん。

階上漁業協同組合・小渡部会理事の長根義則さん
階上漁業協同組合 漁師の南正美さん

光るものを好むというアブラメの性質から、「てんびん」には反射板が付けられているのですが、こちらの仕掛けも自作のもの。漁師さんそれぞれに流儀とオリジナリティがあります。ちなみに南さんは、釣り竿と「てんびん」を使う一本釣りが主だそう。

釣り竿など漁で使う道具
釣り竿など漁で使う道具
ルアー
ルアー
てんびんについている反射板
てんびんについている反射板

全国各地で水揚げされるアブラメですが、階上沖産のものについて「エビやカニ、北寄貝といったエサが豊富。おいしいものを食べて育っているから味がいいのでは」と笑顔を見せる長根さん。階上のアブラメは、質はもちろんですが漁獲量もかつては豊富でした。しかし、2011年の東日本大震災による大津波で海底の環境が変化したからか、10年ほど前から漁獲量が急減。長根さんは、海底での海藻類の分布が変わりアブラメが産卵できる場所が少なくなったことや、海に流れ込んだ汚泥や近年の海水温上昇が生態系に影響を与えたと推察しています。ピーク時の漁獲量から一時は三分の一まで減少した漁獲量ですが、令和元年度からのブランド化事業で、稚魚放流を行い成長してから漁獲する栽培漁業を続けた結果、漁獲量は徐々に回復傾向に。

資源を守りつつ、付加価値を付けて魚単価を向上させることで浜に活気を取り戻し、おいしくて質の良いアブラメを流通させることで観光客を呼び込み地域も活性化させようとする狙いがあります。

階上漁業協同組合 南さん(左)長根さん(右)
階上漁業協同組合 南さん(左)長根さん(右)

おすすめはやっぱりお刺身!

くせのない味わいゆえに、どんな調理法でも楽しめるアブラメ。煮つけや塩焼き、竜田揚げなど、食べ方はさまざまです。アブラメは捨てるところがないと言われ、アラは汁ものにして、皮はあぶるとおいしくいただけます。南さんは「いろいろ食べ方はあるけど、やっぱり一番は刺身。特に活け締めしたものは味が違う」とにっこり。「野締めのものとも食べ比べてもらいたい。やっぱり活け締めがおいしいと分かるはずです」と話す長根さん。「階上アブラメ」に欠かせない活け締めの作業は漁師にとって負担が少なくないですが「大変だからこそ、食べてもらうことへの楽しみがある。努力が報われるというか。ブランド化に向けてはまだまだこれから。頑張っていきたいです」と展望しています。

お刺身のアレンジ「漬け丼」
お刺身のアレンジ「漬け丼」
お刺身のアレンジ「カルパッチョ」
お刺身のアレンジ「カルパッチョ」

アブラメを購入できる場所

はしかみハマの駅あるでぃ~ば
住所 青森県三戸郡階上町大字道仏字大蛇203-208
TEL 0178-38-3166
Webサイト https://aldiva.jp/
はしかみハマの駅あるでぃ~ば
はしかみハマの駅あるでぃ~ば

今回お話を伺ったのは

階上漁業協同組合・小渡部会理事 長根義則さん

階上漁業協同組合・小渡部会理事
長根 義則 さん

階上漁業協同組合 南正美さん

階上漁業協同組合
南 正美さん


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