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産地情報 ~まるでお餅?!
青森県生まれのやまのいも「もちとろろ」~ Michiki農園 工藤 三千輝 さん (2023年11月)

まるでお餅?!<br>青森県生まれのやまのいも「もちとろろ」

青森県つがる市車力地域で栽培されている、やまのいもの一種「もちとろろ」。その名の通り、すりおろすとまるでお餅のようにふんわりモチモチで、自然薯にも匹敵するほどの粘り強さと濃厚な甘みが特徴です。屏風山地域の砂地特有の水はけの良い土壌と、生産者の惜しみない努力によって育まれた希少な逸品です。

青森県内で開発した「つくなが1号」

つがる市車力地域で「もちとろろ」の栽培を行っている、「Michiki農園」の工藤三千輝さんの畑を訪ねました。「これは、青森県産業技術センターが、青森県産優良ながいもと、加賀丸いも(つくねいも)をかけ合わせて開発した『つくなが1号』という品種のやまのいもなんですよ。粘りが強く、すりおろすとお餅のようにまとまり、もちもちとした食感になるので、『もちとろろ』という商品名でブランド化を図っています」と、工藤さん。

畑では、晩秋の日の光を浴びた「もちとろろ」の葉っぱが黄金色に輝いています。地上部の葉っぱが枯れてくると収穫期を迎えたサイン。今年は、11月中旬ごろから収穫が始まるといいます。

黄金色の葉っぱが枯れて、収穫期を迎えたサイン
黄金色の葉っぱが枯れて、収穫期を迎えたサイン

砂丘地土壌で試験栽培をスタート

もともと、工藤さんは、「もちとろろ」を手がける以前から、ながいもの栽培に取り組んできました。「令和元年度ながいも産地力強化戦略推進大会」においては、県内5つのJAに寄せられた31点の応募作のなかから、工藤さんのながいもが農林水産大臣賞・最優秀賞に選ばれたこともあるほどの“ながいも名人”です。

収穫したばかりで土がついたもちとろろ

そんな工藤さんは、ながいもとつくねいもの特性を併せ持つ「つくなが1号」に出会い、その食感や濃厚な甘さに興味を持ったといいます。

「2013年から試験栽培に取り組み始めたのですが、最初の数年間は失敗の連続。数えるほどしか発芽しなかったり、砂丘地特有の土壌で肥料もちが悪いこともあって、なかなか思い通りに育たなかったんですよ」。

「Michiki農園」  工藤 三千輝 さん
Michiki農園 工藤 三千輝 さん

工藤さんは、畑の土を深く掘り起こして上下の土を入れ替える天地返しを行ったり、貝殻粉末を利用した微生物資材を土に混ぜて土壌改良を行うなど、試行錯誤を繰り返しました。そうして、試験栽培を始めて3、4年が経過したころから、徐々にこの地での栽培ができるようになったといいます。

「もちとろろ」の畑は、現在1ヘクタール。6月中旬に種芋の植え付けを行い、その後、人力で1本ずつ支柱を立て、成長に合わせて茎や葉をネットに誘引していきます。11月中旬、葉が枯れてきたころをめやすに機械で土を掘り起こし、1本ずつ手作業で収穫を行います。

秋掘りのほか、半量は雪の下で越冬させ春に堀り起こして出荷しています。熟成させることで、さらに甘味が増すといいます。
工藤さんは、「消費者の方に安全・安心なものを届けたい」との思いから、生育中は除草剤を2回使用するのみで、その他の農薬は使わずに栽培しています。

もちとろろの収穫風景 機械で土を掘り起こす
「もちとろろ」の収穫風景 機械で土を掘り起こす

人々の暮らしや農作物を守ってきた屏風山の防風保安林

工藤さんの畑の周囲には、藩政時代からの新田開発の歴史を物語るクロマツの林が連なっています。

かつて、この地は、日本海からの強い偏西風とともに巻き起こる砂嵐により、砂が畑の農作物を覆いつくしてしまうほどでした。そこで、1682(天和2)年、弘前藩4代藩主・津軽信政は、防風と海岸砂防のためにクロマツの植林に着手。その後も、植樹・造成事業が繰り返され、現在は、日本海に面する津軽国定公園指定七里長浜の海岸線に沿って、長さ約30キロメートルのクロマツの防風保安林が広がっています。屏風山という名称は、海岸線に連なる松林が、屏風のように見えたことからその名が付けられたといわれています。

もちとろろの畑の奥に見えるクロマツ
「もちとろろ」の畑の奥に見えるクロマツ

かつては、一面、不毛の湿地帯だった屏風山砂丘は、200年以上にわたって植林や開拓が行われ、今では、砂丘地特有の水はけの良い環境を生かした屏風山のメロンをはじめ、ながいも、ごぼうなど根菜類の適地として知られています。

お米の分野では、つがる市で第1号。グローバルGAP認証を取得

工藤さんは、これまで、お米やにんにく、ネバリスター、小麦などさまざまな農作物の栽培に取り組み、車力地域の農業振興に大きく貢献してきた一人です。

「これからは、こだわりのある米を作らないと売れない時代」という思いから、2019年には「まっしぐら」や「あさゆき」を作付けする23ヘクタールの水田において、農産物の安全性に関する国際規格、グローバルGAP認証を取得しました。お米の分野では、つがる市で第1号の認証です。また、ブランド品の「つがる舞雪」(品種:あさゆき)は、農薬・化学肥料を青森県の基準の半分以下に抑えた特別栽培農産物の認証を受けています。

とろろ、ピザ風、鍋や汁ものと、メニューも多彩

「もちとろろ」は、ながいもをひと回り小ぶりにしたような大きさですが、ながいもに比べて表面がボコボコしており、一見、無骨な印象。しかし、皮をむくとつやつやと輝く雪のような白い肌が現れ、生はもちろんのこと、焼いても煮てもおいしくいただけます。

ハウス栽培 新時代かぼちゃ
表面がボコボコしている「もちとろろ」

工藤さんによると、まずは、とろろでいただき、「もちとろろ」本来の味にふれてほしいとのこと。さっそく皮をむいてすりおろしてみると、もっちりお餅のようにまとまり、はしですくいあげても、かたまりがそのまま持ち上がるほどの粘りに驚きます。一口いただくと、濃厚な旨味と甘さが口の中に広がり、もちもちとした食感が楽しめます。粘りが強くて食べづらい時は、お好みでだしを加えるのもおすすめです。

ハウス栽培 新時代かぼちゃ
すりおろした「もちとろろ」

さらに、工藤さんおすすめの「もちとろろピザ風焼き」にもトライ。サラダ油をひいたフライパンに、すりおろした「もちとろろ」を薄く伸ばし、その上から細切りチーズをパラパラ。ふたをして、こんがり焼き目がつきチーズがとろりと溶けたら出来上がりです。加熱することでふわふわの生地になり、小麦粉などのつなぎや調味料を加えなくてもおいしくいただけます。

また、工藤さんのイチオシの「もちとろろのポテトサラダ」は、じゃがいもを「もちとろろ」に置き換えて作るぜいたくなポテサラ。スライスしたきゅうりやたまねぎ、にんじんを加えると彩りも良く、「もちとろろ」のコクや粘りと相まってご馳走メニューになります。

これからの季節は、お鍋や汁ものに「もちとろろ団子」を加えるのもおすすめ。とろろをスプーンですくい、お鍋や麺類などの汁ものに入れて一煮立ち。おいしいスープをまとったふんわり優しい「もちとろろ」の食感が、心も体もぽかぽかと温めてくれます。

工藤さんによると、購入後に使いきれない時は切り口をラップで包んで、冷蔵庫で保存するのがおすすめだとか。「我が家では、毎日、『もちとろろ』を食べているせいか、風邪をひくこともなく健康に過ごしています。ぜひ、多くの方に知っていただき、おいしく召し上がっていただきたいですね」と、語ってくれました。

「もちとろろ」を購入できる場所

青森県内の「カブセンター」、「つがる市農産物直売所」など

今回お話を伺ったのは

「Michiki農園」工藤 三千輝 さん

「Michiki農園」工藤 三千輝 さん

住所 青森県つがる市車力町若林104-1
Webサイト https://www.mochitororo.com/


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