JA十和田おいらせ管内で栽培されている「ぼけしらずネギ」は、葉の緑と白い部分の境目がくっきりと分かれていることから、その名が付けられました。太く身が締まり、辛みが少なく甘みが強いのが特徴で、加熱するとさらに甘さがアップします。とろけるような極上の味わいは、市場でも高い評価を得ています。
丁寧な「土寄せ」によって生まれる、緑と白の美しいコントラスト
ねぎは、全国各地で栽培されていますが、その種類は、大きく2つに分けられます。ひとつは、関西以西に普及し、葉の部分を食用とする葉ねぎ。そして、もうひとつは、関東以北で栽培され、主に軟白部分の白根を食用とする根深ねぎです。青森県では、根深ねぎの生産が主体となっています。
十和田地区は、県内有数のねぎの産地として知られています。9月下旬、十和田市で、ぼけしらずネギを栽培している中野渡正宣さんの畑を訪ねました。
中野渡さんの2ヘクタールの畑では、ぼけしらずネギの収穫の真っ最中。中野渡さんは、機械で掘り起こしたねぎを専用の収穫ネットで包み、次々に軽トラックへと積み込んでいきます。
「緑と白の境目をくっきりとさせるコツは、最後の土寄せ次第なんですよ」。そう言って、中野渡さんはねぎを手に取り説明してくれました。
根深ねぎは、株元に土をかぶせる土寄せという作業を繰り返すことで、土に覆われた軟白部分が長くなっていきます。そのため、栽培期間中は数回に分けて土寄せを行い、徐々にうねを高くして軟白部分の成長を促します。最終的な土寄せを行ってから、夏場は約2週間~20日、9月~10月は約1カ月で収穫します。
しかし、この期間に風雨などで株元の土が崩れてしまうと境目の色があいまいになり、ブランドの特徴が損なわれてしまいます。そのため、収穫まで気が抜けないのだといいます。中野渡さんの畑では、10月下旬までねぎの収穫が行われます。
畑で収穫したねぎは、近くの作業場へと運ばれます。ねぎを皮むき用の機械にセットすると、空気の圧力で表面の薄皮がヒュンヒュンとむけて飛ばされ、たちまち、表面がつやつやと絹のように白く輝きます。規格に合わせてサイズごとに箱詰めしたねぎは、出荷時の検品を経て、関東地方に向けて出荷されています。
健康な土づくりによって生まれる、ミネラルたっぷりの野菜たち
「JA十和田おいらせ」野菜振興会ねぎ専門部会は、十和田市とその近隣町村の会員約170名で構成しており、中野渡さんは、同部会の部会長を務めています。
「JA十和田おいらせは、健康な土壌づくりにこだわって高品質な野菜づくりに取り組んでいるんですよ」と、中野渡さん。堆肥分析装置や土壌分析・診断システムを導入し、過剰な肥料の投与は控え、不足している肥料成分だけを補給。ミネラル豊富な土で育った安全・安心な独自ブランド野菜は、「TOM-VEGE(トムベジ)」(T=十和田 O=おいらせ M=ミネラル VEGE=野菜)として全国の消費者から高い評価を受けています。
中野渡さんや、ねぎ専門部会のメンバーたちも、部会独自の出荷基準を設け、栽培と出荷にあたっています。「生産者によって品質のばらつきが生じれば、産地としての評価を落としてしまう。そのため、土づくりに留意し、出荷時には念入りに検品を行っています」。こうして、糖度5度以上、さらに、緑と白の境目がくっきりした美しい外観を兼ね備え、全ての基準値を満たしたものだけが、「ぼけしらずネギ」として出荷されます。
全国の産地が集まる「全国ねぎサミット」でも高評価
「全国のねぎの産地から生産者たちが集まって、ねぎの魅力を発信する『全国ねぎサミット』というイベントがあり、最近はコロナ禍の影響で参加できていませんが、以前参加した際には、ぼけしらずネギは、来場者たちから『食感も良く旨味と甘味が強い。色もきれい!』と、大好評でした。部会の若手メンバーたちは、ぼけしらずネギのTシャツをつくって産地をアピールしたり、ねぎを使ったドレッシングの開発・販売など6次産業化にも挑戦するなど、意欲的なメンバーがそろっています」。
脇役ではなく、メイン食材としてたっぷり食べたいねぎ
中野渡さんによると、ぼけしらずネギは、ぶつ切り、または白髪ねぎにしてかき揚げにして食べるのがおすすめだとか。また、ぶつ切りにしたねぎの白根部分を天ぷらにして、のり塩をかけていただくのもおすすめだといいます。鮮やかなグリーンと白のコントラストが見た目にも美しく、加熱することで風味が増し格段に甘くなります。
「すぐに食べない時は、ねぎを新聞紙で包み根を下にした状態で、冷暗所で保存します。また、ぶつ切り、みじん切りなど、お好みのサイズにカットしてから袋に入れて冷凍しておけば、すぐに使えて便利です」。
ねぎは、薬味など、脇役として使われがちですが、ぜひ、メイン食材として活用してみませんか。
購入できる直売所
JA十和田おいらせ「ファーマーズ・マーケットかだぁ~れ」( TEL:0176-51-4020)
今回お話を伺ったのは
「JA十和田おいらせ ねぎ専門部会」部会長
中野渡 正宣さん