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産地情報 ~独特の芳香と甘味が味わえる食用菊「阿房宮(あぼうきゅう)」~ (2020年11月)

独特の芳香と甘味が味わえる食用菊「<ruby>阿房宮<rp>(</rp><rt>あぼうきゅう</rt><rp>)</rp></ruby>」

青森県南部地方に古くから伝わる食用菊「阿房宮(あぼうきゅう)」。目にも鮮やかな黄色い花びらは苦みが少なく、独特の芳香と甘味が味わえます。生食はもちろんのこと、蒸して乾燥させ、シート状にした干し菊は保存がきくため、1年を通じてさまざまな料理に活用できます。

東北地方では、菊は脇役ではなくメイン食材!

阿房宮(あぼうきゅう)」という美しいネーミングは、その昔、秦の始皇帝が菊を愛でたという宮殿の名前に由来しています。一説によると、江戸時代に南部藩主が京都の九条家から譲り受け、相内村(現・南部町)で栽培したところ非常においしかったことから、食用として藩内に広めたと伝えられています。
一般的に食用菊というと、刺身などに添える「つま菊」のイメージが強いかもしれませんが、東北地方では菊の花びらを野菜の一種として食べる習慣があり、料理のバリエーションも豊か。晩秋の南部地方を彩る風物詩です。

名久井岳を望む阿房宮(あぼうきゅう)の畑を訪ねて

阿房宮を生産している和田進さんの畑

南部町で阿房宮(あぼうきゅう)を生産している和田進さんの畑を訪ねました。紅葉に彩られたのどかな里山と名久井岳を望む5アールの園地では、阿房宮(あぼうきゅう)が競うように美しい花を咲かせています。「毎年10月下旬から収穫を始め、収穫期はだいたい2週間ぐらい。霜にあたると変色して売り物にならなくなってしまうので、霜が一番の大敵です」。日々、天気予報を気にしながら翌朝霜が降りそうな時は、霜よけの白いシートをかぶせることもあるといいます。

和田さんは、リンゴ、モモ、ゼネラルレクラークなどの果樹栽培を行なっており、果樹の作業が一段落した頃に阿房宮(あぼうきゅう)の収穫に取りかかります。「今年は、花が大きくて形のきれいなものが多いんですよ。だから、加工に回さずに、生で出荷する量が多いかもしれない」と、目を細めます。「満開になった阿房宮(あぼうきゅう)は、こうやって鎌で刈り取るんです」と言って、ギザギザの刃のついた鎌を見せてくれました。生で市場に出回るのは約2週間。生で出荷する以外は、花びらをむしって蒸した後、円形、または長方形の形に広げて乾燥させ、干し菊として出荷しています。

出荷された干し菊

阿房宮(あぼうきゅう)」で食卓に彩りを~おすすめの食べ方とコツ~

阿房宮(あぼうきゅう)は、香りが豊かなので味噌汁や鍋に入れると、さらに香りが引き立つんですよ」と、和田さん。おすすめの食べ方は汁物だといいます。完成間際、花びらを散らすだけ。華やかな見た目が加わって、おいしくいただけます。
また、最近はあまり家庭で作られなくなってきたものの、がくを取らずに花の形のままで天ぷらにすると、おもてなし料理にもぴったりな一品になるそうです。また、この地域ならではの伝統的な料理は「菊巻き」。一夜漬けしたダイコンやニンジン、タカナなどを菊で巻いた、カラフルで見た目にも美しい漬物です。

阿房宮の香り豊かな味噌汁

和田さんによると、干菊は戻し方がコツとのこと。「ぐつぐつ煮ると風味が損なわれるので、さっとゆでるのがポイントです」。
お酢との相性も良く、さっと湯がいて水気を絞り、ダイコンおろしと混ぜて二杯酢などで和える「菊なます」も絶品。シャキシャキした食感が味わえます。

あっさりとした風味はどんな料理とも相性が良く、鮮やかな黄色は料理を引き立て、食欲をそそります。加熱しても美しい色合いが変わらないのもうれしいところ。

寒さが増すこの季節、干し菊をひとつ常備しておくだけで手軽に使用でき、カラフルな色彩が食卓を華やかに彩ってくれます。

阿房宮の鮮やかな黄色い花びら

阿房宮(あぼうきゅう)」を購入できる場所

南部町

  • 名川チェリーセンター
  • なんぶふるさと物産館 など
青森県産業技術センター内水面研究所 前田穣 養殖技術部長

今回お話を伺ったのは

阿房宮(あぼうきゅう)の生産者
和田 進さん

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