2010年12月4日、東北新幹線が全線開業しました。東京から新青森駅まで約3時間20分でつながります。便利になった青森を訪れ青森県産のそばを味わってみてはいかがですか。
今回は新幹線全線開業にちなみ、新幹線停車駅の周辺地域のそばを紹介していきます。
青森県のそば
「そば」といえば北海道や長野県、福島県などが有名ですが、実は青森県は、作付面積・収穫量全国第6位と全国でも有数のそばの産地です。
青森県のそばは県内で広く栽培されていて、津軽そばの津軽をはじめ、下北、上十三、三八など県内各地で地元に根付いた様々なそばがあります。作付面積は米の減反に伴い拡大し、平成21年産で2,430haとなっています。
青森県奨励品種「階上早生」
青森県には「階上早生(はしかみわせ)」という在来種のそばがあり、青森県の気候風土に適し、味や香りにも定評があります。
そばの品種改良は、米や麦類などと異なり、近年まであまり行われてきませんでした。もともと品種改良に対するニーズがなかったことや、ほかの品種と交雑しやすいため、遺伝的にまとまった集団を作ることが困難であることなどが理由です。在来種のうち、系統選抜や特性調査が行われ、固有の品種名がつけられたものはごくわずかしかありません。
階上早生は歴史が古い品種です。大正2年の大凶作でも相当の収量が得られたことから青森県農事試験場(当時)が大正4年にその種子を取りよせ、特性調査と選抜を重ねて「階上早生」と命名し、昭和8年、青森県の奨励品種となりました。
奨励品種とは…
都道府県が農業試験場等の試験結果に基づいて定める優良品種のことで、奨励品種となればその栽培が奨励されます。都道府県が県が奨励品種として普及する品種は、採種体系があり均一な種子の供給体制がとられています。奨励品種制度を設けているのは青森県、北海道、岩手県、山形県、茨城県、長野県、宮崎県です。
新幹線停車駅の周辺地域のそば
八戸駅
■ 階上そば
夏に冷涼な気象をもたらす「ヤマセ」の影響から、かつて県南地方は稲作にあまり適さない地域でした。そんな中でも、実りが得られるそばは大事な食料のひとつで、「階上早生」は今でも広く栽培されています。
実は大粒できれいな黒褐色。とにかく香りがよく、コシや粘りが強く、土の香りが漂う素朴な食感を楽しむことができます。階上岳の麓で栽培された風味豊かな「階上早生」を、「階上そば」とネーミング、さらに商標登録として、現在ブランド化を進めています。
《食べられるお店》(定休日・営業時間等については直接お問い合わせください)
- 階上町わっせ交流センター(階上駅から車で約15分)0178-88-2709
- フォレストピア階上(鳥屋部・登山口入口)0178-88-4449
- 道の駅はしかみ(国道45号沿い)0178-88-1800
- 観音茶屋「東門」(赤保内・寺下観音)0178-88-3987
■ 南部町のそば
南部町の南地区では昔から温暖な山間の気候をいかした、質の高い美味しいそばの栽培が盛んに行われていました。冠婚葬祭や遠方からの大事なお客様には必ずといっていいほど「そば」や「そばかっけ」が振る舞われ、おもてなし料理として大変喜ばれたそうです。
《食べられるお店》(定休日・営業時間等については直接お問い合わせください)
- そばの里けやぐ0178-76-1060
■ 田子町のそば
田子町の新田集落は、古くからそばの栽培が盛んな地域でした。集落全戸で構成する新田自治会では、地域のシンボルであり江戸時代から伝わる「水車」、そして先人から伝えられてきた「そば打ちの技術」で、10月の第3日曜日に水車搗き新そばまつり」を開催しています。このほか、8月を除く毎月第3日曜日は地元の畠山さんがお店を開いて、田舎の風味豊かなそばをご用意しています。
《食べられるお店》(定休日・営業時間等については直接お問い合わせください)
- 水車(からうす)そば 處 0179-33-1854(畠山さん宅、17:00以降)
■ 南部地方の伝統的そば料理
この優良種「階上早生」に恵まれたこともあって、南部地方のそば料理は非常に多彩です。代表的な「そばかっけ」、そば粉をお湯で練った「そばけえもち」、どぶろくで練った「そばがき」、茹でたそばもちを串に刺して焼く「串餅」、そば粉をこねて柔らかくしたものを味噌汁に入れる「てこすりだんご」、そば粉を熱湯でこねて皮を作り、中に味噌を入れて焼く「いびきりもち」、細長く切って麺にする「そばはっと」(今でいうそばのこと)など、当時の工夫がうかがえます。
■ そばかっけ
「そばかっけ」は南部地方のもてなし料理で、三角形に切りそろえたもの。細長く切れば「はっと」、三角形に切れば「かっけ」です。 「かっけ」という名前の由来には諸説あり、売って伸ばしたそばの「かけら」を使ったことから「かっけ」となった説、「か、けぇ(どうぞ食べて)」と客人をもてなしたことから「かっけ」となった説など、その語源にはおもしろいものがあります。 かっけを沸騰した湯に投入して、にんにくみそ、じゅねみそ、くるみみそなどをつけて食べます。
八戸駅
八甲田山の東側、青森市と八戸市のちょうど中間付近に七戸十和田駅(七戸町)はあります。東北新幹線が開業すると新青森・八戸間にある唯一の新幹線駅となります。
そんな七戸十和田駅の目の前に位置する「道の駅しちのへ」では、地元のそば粉で打ったそばが食べられるそばコーナーを併設しているほか、そば粉を使用した「そばソフト」も人気商品として販売されています。
また、今年4月にオープンした「しちのへ産直七彩館」。開放的な雰囲気の店内では、にんにくやトマトなど新鮮な野菜や、漬け物などの加工品がずらりと並んでおり、地元の産品をお買い求めいただけます。
《食べられるお店》(定休日・営業時間等については直接お問い合わせください)
- 道の駅しちのへ(七戸町)TEL. 0176-62-5777
- 農家のそば店 婆古石(七戸町)
新青森駅
■ あおもり海道(かいどう)そば
「あおもり海道そば」とは、東青地方(青森市、平内町、外ヶ浜町、今別町、蓬田村)で生産されているそばで、水田や畑が利用されています。特に、水田転作でとして作付けされていることから、排水不良等により収量・品質レベルも上がらず、農家の生産意欲は必ずしも高いとはいえませんでした。
そこで、生産者、加工業者、そば店等で構成される、東青そば海道づくり推進事業検討会を設立し、陸奥湾沿いに作付地があることから、海の文字を用いて「あおもり海道そば」と命名し、東青産のそば粉に由来したモノづくりにより地域振興を図っています。活動としては、オリジナルメニューの開発、観光客をターゲットとした地元食材を組み合わせた新商品の開発などに取り組みました。その結果、東青産そばは、平成21年度実績で4.5tの玄そば・そば粉を供給しており、平成16年と比較してその数量は約10倍に増加しました。
あおもり海道そばの品種は、主に「キタワセソバ」で、農薬は使用していません。ヤマセの風が運ぶ磯の香りを受けて育ったそばの実を丹念に選別製粉し、地産地消の思いを込めて作られた「あおもり海道そば」を是非ご堪能ください。
《食べられるお店》
※当サイトの掲載内容については十分確認をした上で掲載しておりますが、情報が古くなっている場合もあります。
正確な情報は必ず各店舗にお問い合わせください。
《購入場所》
- 玄そば・そば粉=青森農業協同組合(青森市羽白)017-763-1001
- そば麺=JA青森あすなろ直売センター(青森市羽白)017-787-1988
《そば打ち体験場所》
- そばの花(外ヶ浜町)090-5351-4283017-763-1001
- 蓬田村そば打ち研究会(蓬田村)090-7064-6538
そばの知識
そばの歴史
そばはタデ科そば属の一年性植物です。食用穀物の多くがイネ科やマメ科に属するのに対して異色の存在です。原産地は中国雲南省・四川省のあたりで、ユーラシア大陸全般で食されています。栽培の歴史は古く、日本でも縄文時代から食べられていたことがわかっており、救荒食物としてそばの栽培を促したという記録が残っています。
そばの定義
「日本農林規格(JAS)」の「干しそば」では、40%以上のそば粉を用いた麺を標準品、50%以上を上級品としています。また、生めんについては、「生めん類の表示に関する公正競争規約」が定められており、「そば粉30%以上」のものは「そば」と表示することが認められています。
そば粉を用いた「そば」のほか、中華そば、焼きそばなどのように、麺類全般として「そば」と通称することもあります。ソーキそばなどで有名な「沖縄そば」は小麦粉100%で作られていますが特例として「沖縄そば」の表記が認められています。
そばのつなぎ
そば粉だけでそばを作るには高度な技術が必要です。そば粉のたんぱく質全体の40%以上は水溶性のため、小麦粉と違ってグルテン形成がありません。そのため、生地のつながりが悪く麺を作りにくく、つなぎとして小麦粉などを配合します。小麦粉の添加量が多くなるにしたがって、十割そば、八割そばなどと名称が変わります。小麦粉以外にもヤマイモやコンニャクなどをつなぎとして加え、独特の食感やコシを加えたものもあります。
津軽地方に昔から伝わる「津軽そば」は、小麦粉のかわりに大豆をつなぎとして使用しています。
そばの成分
そばの実のカラに含まれる色素「ルチン」はフラボノイドの一種でビタミンPとも呼ばれています。ルチンはビタミンCとともに働くことから、ビタミンCの豊富な野菜や果物と一緒に摂ると吸収率が高まり効果的です。 また、ルチンのほかにビタミンBの一種であるコリンやナイアシン、食物繊維であるヘミセルロースが含まれています。
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