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産地レポート 〜 生産者の声 〜

五戸バオリ・・・稲村幸男さん(五戸町)

写真

五戸バオリは、江戸末期、蛯川村の武士「鳥谷部覚右衛門」が旅人の編み笠や農民のかぶりものからヒントを得て考案したと言われている。雨よけ日よけとして重宝された。
その技術は、農民に伝えられ日常のものとなり、各地に嫁いだ娘たちによって広まった。
それ故、今でも、八戸・七戸・十和田に形を変えつつ残っている。

様々なバオリ:稲村政吉さんの寄贈 12目10目8目そり方が違う


藺草(いぐさ)

各地に伝わったバオリは、形や色付けがそれぞれ違う。 五戸バオリは、若者用12通り、高齢者用10通りと他の地域よりバリエーションが豊富だという。編み段の数12段・10段・8段によっても反り返りの美しさが違う。
蛯川のバオリが100年以上も続いたのは、農民にとっての数少ない現金収入だったことと、生産者同士が団結し組合を作っていたこと、技術の伝承と後継者の育成に努めてきたこと、バオリの原料の藺草(いぐさ)に適した土壌だったことがあげられる

昭和40年代までは、農閑期の収入源として生産されていたが、ビニール等の安価な作業帽の台頭で徐々に衰退していった。

バオリの制作工程(一部抜粋)

台の向きで高さが変わる 頭部の大きさを決める皿と釘 折り目を潰す
  頭の部分を作るため
藺草を束ねる
 
左表右裏になる   開く
上表下裏 ひっくり返して釘を入れる 釘を入れて刺す
ふちを編んで行く 目数により間隔が決まる。
目数は8・10・12の順
竹を入れてしごく。
一 番の見せ場
最後の工程ふち編 天上を細くカット あご紐を付け完成
 
完成  

 

五戸バオリが次に陽の目を見たのは、映画の中だった。
1941年、山本嘉次郎監督の『馬 』の撮影中、助監督だった黒澤監督がバオリの美しさに目を見張り、買い求め、それから50年後に 映像の中で使った。

黒澤明監督の映画「夢」の中の『水車のある村』オムニバス形式の短編八作品を審美的に仕上げた作品。
「水車のある村」で、バオリをかぶり、一見インディカ風?の格好をした笠 智衆さんと“若者が生きることについて禅問答”のようなことをする。向こうから隊列を組み、ねぶた囃子の一節を取り入れたかのような音楽に乗って歩いてくる葬列の一団と、やがて、老人は一緒に去っていくというシーンだ。この映画で、隊列を組む人たちが被っていたのが五戸バオリ。  

写真提供:田中 智子 氏

この映画の衣装デザインを担当したのが、黒澤明監督のお嬢さんで衣装デザイナーの黒澤和子さん。バオリを調達するのに、作り手がもう存在しないと言われていた作り手を必死で探し100個を確保したという。
100個の注文を受けたのが、最後のバオリ職人と言われた川村長八さん。平成3年に亡くなった。


稲村政吉さん寄贈のバオリ

その技術を、稲村政吉さんが引き継ぎ、息子さんの稲村幸男さんに伝承し、現在では、その技術を繋ぐのは、稲村幸男さんだけになった。
稲村政吉さんは、平成6年から蛯川公民館で「郷土学習教室」と題して開かれた五戸バオリの講習会の講師を務め、各種のバオリを公民館に寄贈した。

今、息子さんである稲村幸男さんは、各地で開かれる五戸バオリの製作教室の講師として活躍しているほか、五戸バオリの継承を強く願って自宅に工房を作り、2~3人が集まって製作している。

網目が揃っているか、そりが美しいか。バオリ製作の上手下手は、見かけで分かるという。日々、お弟子さんたちは、修行している
お弟子さん達と


バオリを無くしたくないとの想いで継承した稲村さんだが、いろいろと難しい問題に遭遇している。今の一番の悩みは、材料の調達にある。今使っているバオリの胴体部分の藺草は、稲村さんのお父さんの時代からのもの。そろそろ無くなりつつある。藺草を熱湯に通し何日か乾燥させる。今年は少し藺草栽培に力を入れて取り組まないといけない。

バオリ発祥の地蛯川にある
稲村さんの藺草畑
藺草は植えた翌年の8月に収穫


そして、もう一つ、バオリのそりの部分を形作る竹の栽培だ。
竹は真竹。竹も色々と種類があってバオリ作りに向く竹は、真竹だけという。
真竹は、表面の皮の部分が強く、しなりが良く、30度近く曲げても大丈夫だという。
他の竹では、ピリピリと皮に亀裂が入るそうで、折角編んできたバオリもやり直しとなる。真竹の栽培も今後の課題だ。B-3~B-6

真竹 農家の裏庭へ
長さを揃える このくらいの太さがなくては

現在、製作数は、二日に一個。目や肩への負担が大きいという。

毎年、7月12日、「田植え・田の草取り唄と踊り」が開催されている。
地元の婦人方が、バオリを被り、農作業風景を唄と踊りで綴る。
雨にぬれると藺草が膨らみ網目をちじめ、乾燥すると広がり、隙間が出来る。
夏涼しく、雨に強いバオリ。

透かし具合が丁度よいと言う  


伝統工芸品には、確かな裏打ちがある。

 

[お問合わせ先]

●五戸町観光協会 
〒039-1548 
青森県三戸郡五戸町新町24-1
TEL:0178-62-7155  
FAX:0178-62-7160
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掲載日 2016.8.1


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