マーケティング情報


消費地レポート

第94回

株式会社 ただいま
代表取締役 佐藤 翼 氏

写真

【佐藤 翼 氏 プロフィール】
1998年早稲田大学商学部卒業。人材派遣会社での新規事業部門での企画営業を経て、広告企画会社にて、大手デパートの販促企画、ECサイトの企画を 約10年間担当。
2007年 株式会社ただいまを設立。農業生産法人や地域の中小企業の社長と二人三脚で新規事業推進や、約60名のバイヤー、シェフとのネットワークを活かした販売企画、商品開発を支援。農業生産者や地域の中小企業者向けの販売企画や経営改善の研修会やセミナー講師も多数実施。

  • 農林漁業成長産業化支援機構 6次化中央サポートセンター プランナー
  • 農林水産省 6次産業化プランナー(長野・栃木)
  • 経済産業省 中小企業・小規模事業者ビジネス創造等支援事業(ミラサポ)専門家
  • 中小企業基盤整備機構 専門家
  • 経済産業省 関東地域農商工連携推進研究会委員(2010年)
  • 経済産業省地域のポップカルチャーを活用した地域活性化手法に関する 調査研究会(ホットローカル研究会)委員(2012年度)
  • 農商工連携等人材育成事業 企画/研修講師
  • 東京農業大学 非常勤講師(2011-2012年度)
(株)ただいま
 http://blog.tadaimainc.jp


「その商品で誰を喜ばせて、代金をいただきますか?」
地域発商品に想う事。

せっかく創り上げた地域発の商品は、売れないともったいない

 これまで弊社が出会った、日本各地で創り上げた商品ほとんどが「販売先が未定」です。不景気でモノや店舗があふれるこの時代を考えると、その商品の行く末がいつも心配になってしまいます。膨大な手間や費用をかけ創りあげられた商品は、やはり売れないとかわいそうだと感じてしまいます。

商品開発の成功へ向けた5つのポイント

 地域発商品や農商工連携事業、農の6次産業化の事業化などが成功の条件として、下記の5つをアドバイスしています。

  1. 誰が喜んで代金を支払うか?
  2. 販売を想定するターゲットにとって、その商品やサービスが差別化されているか?
  3. 製造工程・衛生管理・リスクマネジメントは万全か
  4. 原価計算・価格設定は適切か?
  5. 商品やサービスの魅力が伝わるパッケージ、PRが展開できているか?

特に、1.と5.が重要なポイントです。以下、少し詳しく説明します。

1.誰が喜んで代金を支払うか?

 よく、「この商品の販売ターゲットは誰ですか?」という問いに対して、ぼんやりと、「若い女性です」、「食への関心が高い方ですかね」といった答えが多いのですが、これでは商品は売れるようになりません。
モノがあふれている時代に、ひろく喜ばれる商品はなかなか産み出せません。商品が売れるには、なるべくターゲットを限定し、そのニーズに応えることがポイントです。
  若い女性ではなく、何歳の女性で、どんな仕事をしていて、毎日どんな食事をしていて、など、より細かい日常の生活や趣味・嗜好を絞り込むことで、より具体的な販売方針を立てる事ができます。
写真
添加物に敏感な女性に向けて販売促進を実施した、 保存料、安定剤を使用せずに仕上げた『すっぴんミルク』
 弊社が支援した千葉県の酪農家では、安定剤や保存料を使用せずに、甘さ控えめのアイスクリームを開発・販売しています。その際の販売ターゲットは、「ハーゲンダッツをコンビニで購入して自宅で食べ始めたものの、食べきれず冷凍庫に入れてしまった、甘いものが苦手な女性」というものでした。
 この商品は地元の銚子の直売所でデビューし、いまでは髙島屋のオンラインショップなどで商品としてお取り扱いいただいています。
よく、「私の作った商品をまわりのひとにプレゼントしたら、みんなおいしいって言ってくれたので、この商品は売れると思うんです」というご相談もいただきます。
  通常、他の方から無料でいただいた商品を「おいしくなかった」と面と向かっていうかたは、ほとんどいらっしゃらないと思います。プレゼントした方から、「この前いただいた商品、おいしかったから、買わせて欲しいんだけどいくらかしら?」と聞かれれば、これは成功の可能性ありだと思います。


2.販売を想定するターゲットにとって、その商品やサービスが差別化されているか?

 商品に込められた作り手の想いなどのストーリーは、地域から産まれた商品の販売にとって必要不可欠です。
 言うのは簡単ですが、実際のところ、差別化やストーリーは簡単にはできません。ただ、<1>でお伝えした「誰に」を明確にすると、とてもやりやすくなります。
以前、六本木のフードセレクトショップにて、果物の洋なしを販売したことがあります。おいしい洋なしをずらっと並べて販売をしましたが、お客様の反応はいまひとつでした。  前を通るお客様にお話を聞きますと「洋なしをスーパー等で買うと、固くて甘くない」とのこと。六本木のお店でお買い物するお客様ですが、当然お金に余裕があり、食べ物にもお金をかける方々です。
 一緒に販売していた洋なしの生産者が「洋なしには追熟(ついじゅく)が必要で、収穫したあと、数日おかないとおいしくならないんですよ」「そうなの!」お客様は驚いていましたが、生産者はもっと驚いていました。
 「都会のお客さんは追熟を知らないんだね。我々は常識なのに」と。それから、店頭では「今日一番おいしくなっている洋なしです」とご案内して販売したところ、非常に売れ行きがよかったです。
 つまり、都心の消費者の方にとっては、地域の農業での常識が必ずしも常識ではなく、むしろ商品のストーリーとして新たな発見があり、他の洋なしと結果的に差別化されます。



3.製造工程・衛生管理・リスクマネジメントは万全か

 どんなに良い商品でも、製造工程に問題があったり、衛生管理が不十分な商品は販売ができません。
 また、観光農園や農業体験サービスなどを提供する際にも、お客様が怪我をしないか、お手洗いは整備されているかなど検討が必要です。 もちろん、想定する販売先によっても変わります。
 地域の直売所と都心の百貨店で販売する場合では、輸送や売場の設備等の条件も変わりますので、詳細の検討が必要です。食品の製造加工にあたっては、地元の保健所の許可が必要なものがありますので、注意が必要です。
(各地域によって微妙に基準も違いますので、加工製造される地域の保健所へお問い合わせすることをお勧めします)

4.原価計算・価格設定は適切か?

 商品やサービスを提供される方の想いとして、なるべく安価に設定してたくさんの方に楽しんでもらいたい、といった方がいらっしゃいます。
 決して悪いことではないのですが、これが、原価計算が不十分で、利益が出ない場合は、大きな問題です。 意外とよく起こるケースでして、たくさん売れば売る程赤字になるというのは辛い状況です。

写真
『牛肉のロースト鮑醤油仕立て』全国の有名百貨店のギフトで販売中

 特に、加工や製造、提供にかかる人件費を計上していないケースが多く、実質的に赤字になってしまっていないか、チェックが必要です。
  また、販売価格の設定にあたっても、安価に設定するか、高額に設定するか迷った場合は、高額で設定することをお勧めします。その理由は、高額商品を値引きして販売することは可能ですが、安価な設定にした商品の値上げは一般的には難しいからです。

5.商品やサービスの魅力が伝わるパッケージ、PRが展開できているか?

 この工程も仕上げとして非常に重要です。意中の異性に、ラブレターを念入りに仕立てるような感覚で、ぜひ丁寧に取り組んでいただく必要があります。
 商品のパッケージデザインやサービスご案内用のパンフレットについても、わかりやすくセンスのよいものを準備したいと考える地域の生産者も増えています。
  特に女性の経営者の方は、細かい部分まで気を遣い、仕上げていかれる傾向にあると思います。 この時も、デザインは自分の好みだけで決めるのではなく、「誰に喜んでもらうか」をイメージしながら仕上げていく必要があります。
  実は、販売ターゲットを明確にしておけば、デザイン案はそんなに迷うことなく、やっぱり「これだね」とすんなりと決まるケースが多いです。
  また、デザインと同じぐらい重要なのが、商品やサービスのネーミングです。販売を想定する対象が、その商品を魅力的にすぐに感じてもらえるような名前になっている必要があります。
  ちなみに商品の名前がわかりやすくユニークだと、お客様の間でクチコミが起こりやすく、プロモーションの効果もあがります。 プロモーションにあたっては、ぜひ地元の新聞社の取材を受けていただきたいと思っています。
  首都圏のバイヤーやシェフへ、農産物や加工品の商談を行う際にも、コンパクトに魅力を説明してくれている新聞記事は使い勝手がよいです。必ずしも全国紙でなくても構いません。新聞でニュースとして取り上げられていることが、地域の事業者の信頼度を増し、ビジネスを進める上で有効だからです。
  以上のポイントを、ぜひ現在の開発中の商品に照らしてみてください。商品開発の成功に少しでもお役にたてば幸いです。 青森発のすばらしい商品に出会えること、楽しみにしております。



情報掲載:2015年4月15日



バナーこのサイトはリンクフリーです
お問い合わせ先:青森県農林水産部総合販売戦略課
〒030-8570青森市長島1丁目1番1号  E-mail hanbai@pref.aomori.lg.jp
TEL:017-722-1111(代表:内線3108)/ 017-734-9571(直通)
Copyright 2005-2015 青森県農林水産部総合販売戦略課 All Rights Reserved.