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消費地レポート

第46回

朝日新聞記者(大阪経済グループ記者)
加藤 裕則 氏

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【加藤 裕則 さん プロフィール】
1965年10月5日生まれ。秋田県男鹿市出身。岩手大人文社会科学部卒業。89年4月に朝日新聞社入社(編集)。静岡支局や富山支局などに赴任した後、東京、名古屋本社の経済部に。2005年4月から2年間、青森総局次長(デスク)を務める。2007年5月から大阪経済グループ記者(現在は空港・港湾行政と神戸エリアを担当)。


岐路に立った嶽きみ

 「これは許せない」。嶽きみ(弘前市の嶽地区特産のトウモロコシ)を手にした自称・青森ファンの妻(44)がつぶやいた。いつになく険しい表情だ。9月14日深夜、大阪の繁華街ミナミ近くにあるマンション504号室でのことだ。

 この日の帰宅は午前零時過ぎ。午後、ネットで注文した嶽きみが届いたという。早速、ゆでて2人で食べた。妻の指摘を待つまでもなく、私も「う。こっ、これは」。まったく味がない。食べても食べても独特の甘みが感じられない。私はつい、「関西スーパー(※関西のスーパー大手。加藤家が愛用している)のトウモロコシよりダメだね」。見た目も貧弱だった。粒が小さく、一本一本も小型だ。一本があっという間に終わってしまう嶽きみだが、これはやっとの思いで食べた。妻は途中でやめた。

 食べながら、思い出したことがあった。数日前、テレビのワイドショーを見ていたら、天候不順に苦しむ北海道の農家を取り上げていた。トウモロコシの通信販売を手がけているが、不作で予約の顧客に送ることができず、やむを得ず、逆ざやとなるが、近隣の農家から買って送ることにしたというリポートだった。

 それを思い出し、「今年は冷害だから、まあ、しょうがないよ」と私は言った。そしたら妻は、「だって青森の友達から送ってもらったのは、おいしかったでしょう。その時ね、今年は不作で値段か上がったと聞いてたけど。やっぱり嶽きみはおいしかったのよ。それなのに、今回のはね。静岡に送ったのが今回の所のじゃなくてよかった」と反論した。

 さすがの私も考えた。実は、青森の友人から取り寄せた嶽きみは、同時に妻の出身地の静岡のほか、神奈川や愛知の親類・知人にも送っている。もし、今回、注文したところから親類らへ送っていたとしたらどうなるのか。私の頭の中には、「嶽きみへ失望→面目丸つぶれ→ブランド崩壊」の文字が浮かんできた。

 嶽きみの歴史は比較的、新しい。同じ大阪勤務の同業の友人に弘前出身者がいる。私とほぼ同世代なのだが、嶽きみを知らなかった。たぶん、一気に全国ブランドになったのだろう。昨年、関西スーパーで「幻の 嶽キミトウモロコシ」という表示で売られていた。「お、嶽きみも有名になったか。それにしてもダブリ感のある名前だな」と思った記憶がある。

 東北・北海道は今年、天候不順だったという。農家はどこも大変だったに違いない。しかし、大阪は、今年もやっぱり暑かった。私見だが、青森で有名な食材はどれをとっても素晴らしい。私は、秋田県出身で、岩手大を卒業し、静岡→富山→埼玉→東京→名古屋→青森→大阪と住んできた。妻は、どこよりも青森のことを気に入っている。あの強烈な季節感と伝統芸能に魅せられてしまった。その嶽キミは、青森発の全国ブランドの模範生だったに違いない。きっと、その模範生、優等生にとって今年は試練の年になったのではないか。来年以降の人気が気になるところだが、あのおいしさを知っている我が家では、来年も、再来年も頼み続けるだろうが。

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情報掲載:2009年10月1日


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