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消費地レポート「 青森県産農産物についての私見
安全・安心について(トレーサビリティー)

第3回 阪南青果株式会社 社長 笹野成男 氏

消費地レポート第1回でもお話を伺った、阪南青果(株)笹野成男氏に、安全・安心という視点から、 トレーサビリティーについてのお話を伺いました。

【阪南青果株式会社】
関西地方でも老舗の卸問屋として信用と実績があり、とくに早くから 青果物の鮮度保持に注目し、独自の冷蔵技術を確立した、業界でのパイオニア的存在です。 青森県でも農産物の冷蔵技術に関して、多くの農協が指導を受けています。
オフィシャルサイト:http://www.hannan-seika.com/


栽培履歴の提出要因

昨今、農産物の販売に対しては栽培履歴の添付が当たり前のようになっている。売る側も中間業者も産地(農家)に対し提出を要求し、産地側においても提出が当然のことであるとの認識が深まりつつある。現状の販売環境下においては必要不可欠であり、販売段階での優位性を確保する意味でも重要である。安心という意味では履歴がついているのといないのでは格段の差があることも事実であって、これらが栽培履歴の提出を要求する最大の要因である。履歴の提出ができない = 疑わしい、不安、管理ずさん等々と考えられてしまう。消費者にとっては履歴の内容でなく、履歴書があるかないかだけが関心事かも知れない。農家、JA等流通業者、小売業者が疑われているということである。かつて一握りの不心得者が、業界全体に影響を与えた。

現状におけるトレーサビリティー

弊社においては、お取引先から必ず栽培履歴提出を要求され、また何らかの形で開示しているものは、有機、特別栽培品(農林省ガイドラインで義務付けられている)、あるいは小売業者が独自に定めた基準で販売しているいわゆる『こだわり品』。販売全体量から見ると3割程度。但し、慣行栽培品でも産地や生産者が特定できるものは、情報公開はともかくとして販売段階でのプレゼン資料には添付しているか、管理していることを販売戦略としてアピールしている。

反対に特定できないものでも、お得意様から不定期的ではあるが、履歴書の入手を要求される場合があったり、不正を行っていない旨の誓約書を要求されたりもする。まさに関心度は非常に高い。仕入を行う場合も、直接農家と契約する場合は全員に履歴書の提出をお願いしているし、JAや流通業者経由の場合も、提出のお願い、もしくは必要時にいつでも提出できるよう準備しておいて貰うことが条件となっている。市場から仕入する場合、ほとんど要求しないが、後日弊社のお取引先からのトレースが入った場合遡って要求する場合がある。この場合は、農協物である場合たいてい何らかの資料の提供を受けることができる。当然ながら後日の要求である為、当該商品の履歴ではないが、産地としてこのようにしていますという意味合いで、当該商品にできるだけ近いものの履歴が提出資料の大半である。

慣行栽培品については中間業者から小売や加工業者までの段階で、関心は非常に高いものの、現物とその履歴書が同時に動いていないのが現状である。因みに輸入品についてはほとんどのものに栽培履歴がついている。


誰のための安全安心か?

ところで一般消費者は、本当はどこまでの資料を要求しているのだろうか?そして、誰にとっての安心・安全なのか考えてみたい。

思い返せば、トレーサビリティーが騒がれだしたきっかけは、食品メーカーや中間流通業者の産地偽装に端を発している。輸入品を国産と偽装、あるいは二流産地の物を一流産地の名前で出荷等々『ブランド力』を頼りに有利販売に走ったのがその真相である。折りしもかねてから履歴書提出が義務付けられていた有機栽培、特別栽培農産物の需要拡大の流れの中で、全ての農産物に栽培履歴が必要であるとの風潮に変わってしまった。

私見ではあるが、原則的には農産物は農家への信頼が大前提でなければならないと思っている。

いわゆる『農家性善説』である。自分の栽培した農産物にどのような農薬、肥料をいつ使用したのか当然ながら何らかの手段で各農家は記録し管理しておくべきであるが、当然管理されていると思う。もしそうでない農家がいたとすればその人は信頼できない。しかしながら一連の中間流通業者が起こした事件をきっかけに栽培履歴の提出が必要となり、まるで農家を監視でもするような風潮にすり替わりつつあるのは、信頼できる農家にとってはとても迷惑な話である。本来の中間流通業者のモラル、コンプライアンスを問う話しが、あたかも『農家性悪説』に論点がすり変わっているかに見える。

本来的には安心安全は一般消費者の為であり、中間業者や小売業者のためではない。そして一般消費者は例えば『チオファネートメチル』など舌を噛みそうな聞いたこともない成分名の農薬を何cc使ったのか知りたいのでなく、今買った商品が間違いないものであることを何らかの形で立証できていればよいはずである。

いちいち売り場や、パソコン、携帯電話を利用して栽培履歴を確認することにどのような意味を感じているのだろうか?現状ではこれしか方法がないという現実もあるかもしれないが、これに変わる方法があるのかないのか、私自身も含めそれぞれの立場の者がそれぞれの立場でどこまで考えているかは、疑わしい。

安全安心の方策とは?

話しが変わるが、最近でこそユニクロなどの進出で、堂々と中国産衣料が出回っている。中国での縫製技術の進歩もあり違和感もなくなりつつある。しかしかつては中国産というだけで生地や縫製技術に不安があり、国産でないと不安だ!あるいはやはり英国製が・・・などと考えていたのは古い話しではない。食と衣の違いがあり安全性の話はともかく、安心という意味ではやはりブランド力を頼りにしていた。この観点から農産物を見た場合、いわゆる農産物のブランドとは、

  1. おいしいこと。
  2. 姿・形等見栄えがよいこと。
  3. 大産地であって供給能力に優れていること。

などなどが条件であって、いつでも履歴がトレースできるシステムを持っているとか、産地全体で安心安全を宣言しギャランティーすることができるなどという事はその条件の中になかった。

またそれをアピールしている産地(農家、産地業者、行政など)を未だ知らない。衣料の例のように『青森産』というだけで、安心できる、安全だと認識できる方法はないのか。果たして栽培履歴書の完備だけでいいものなのだろうか。何故か農家だけに仕事を押し付けている感が否めない。このことに疑問や反省をしている方は大勢いると思う。

もっとも、我々としては信頼できる農家、産地、JA、産地業者としかお付合いしない心積もりがあり、農家のモラル、コンプライアンスという観点からは、我々中間業者から信頼を勝ち取るために、必要な努力は忘れず励んで欲しいという要望は大きく、農家側の甘えは許されない。


今後のブランド作り

『・・・産』あるいは『・・・産・・グループ』、『・・・農協』、『・・・青果』と聞くだけで、消費者が安心・安全と感じること、これが今後我々に課せられたブランド作りだと認識している。青森においても県をあげての取り組みや指導を期待するところである。

11月に、青森を訪問した際、にんにく、長芋などの商談を行った。量や価格のことがその話しの中の大半であった。ブランドの確立、システムの確立は途方もない努力と時間が必要となり、現実に目の前の商売の話しでは、こうした話しはさらっと終わってしまう。本当は先を見据えこうした話が商談の中心になるよう心掛けたいと自戒し、反省する次第である。


情報掲載:2006年1月1日


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