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消費地レポート 九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター 准教授 比良松 道一 氏

第108回

九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター 准教授 比良松 道一 氏

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【比良松道一 氏 プロフィール】

1965年、福岡市生まれ。九州大持続可能な社会のための決断科学センター准教授。農学博士。福岡県農業総合試験場や九州大農学部などで、作物の品種改良や来歴解明に関する研究に従事。2006年、研究室の女子学生を通じて知った子どもがつくる「弁当の日」に感化され、以降、食文化の伝承に関する研究や大学生を中心とした食育にも力を注ぐ。 2013年から学部生向けに開講している全学授業「自炊塾」は、3ヶ月で生き方が変わるとの口コミで、毎年、定員を超える学生が殺到する。



共感力と利他行動を育む自炊体験

 2013年4月より「自炊塾」という1年生向けの全学授業をおこなっています。自炊経験は問いませんが、1回1点として評価する自炊の回数が成績に最も大きく反映される、前代未聞の授業です。
  ねらいは、私たちの食と暮らしを支える身近な人々に寄り添う心を育て、その人々を応援するような行動変容を促すこと。そのために、自炊という、学生のこれまでの暮らしとはほぼ無縁の世界に足を踏み入れてもらい、その体験をとおして得られる新たな気づきをきっかけにしようというのです 。

   
  1品持ち寄り昼食会の一コマ。食べる人を思って手料理をふるまう体験が、身内や社会で生きる人々に対する利他行動の原動力となる。  

 例えば、週1回、授業前の昼休みに開催される「1品持ち寄り」昼食会は、そういう気づきを促す場のひとつ。学生と教員の手料理を分かち合うこの共食の場では、買ってきた料理を並べて食べるだけでは起こらないようなふるまいが芽生えます。
 「普段は安い外国産で済ませるが、今回は国産の食材を使った」「食べやすいように一口サイズに小分けした」「温かいのを食べてもらいたかったので、一旦、アパートに戻って作ってきた」「事前に試作した」「調理に失敗してやり直しているうちに、授業に遅刻しそうになり、とても焦った」等々。
 目前の料理が、そのような工夫や努力、苦労の末に作られた1品であることを、一人一人が語ってくれます。その状況で「まずい」など、批判的な言葉は出てくるはずもありません。むしろ、作り手を気遣い、売れ行きの悪い料理に積極的に手を伸ばすので、気付けば全品完食です。
 年間1700万トンもの食料を廃棄する日本。こうした食料問題の解決が、食べる人のことを思い、手間をかけて料理を作る体験をした人が世の中にどれだけいるかにも関わっているのだと、学生たちは手料理の分かち合いを通じて気づくことができるのです。

   
 

学生が作り、フェイスブックに上げた写真 「 今日の夜のご飯は、肉じゃが。はじめて作りました。おいしくできました。 」

 


自炊を学びつつ、自炊で学ぶ


   
  自炊塾での調理実演の一コマ。魚の捌き方など、レシピでは表現しにくい暗黙知の世界を見よう見まねで身につける。  

 自炊体験によって育まれる気遣いは、その後、手料理を分かち合う仲間だけでなく、自分を支えてくれる身近な人々の恩に報いる行動へと波及していきます。大学進学まで、毎日の食事や弁当を手抜きせず作ってくれた母や祖母への感謝の気持ちを、電話やメールで伝える人。必死に働いて育ててくれた父へのお礼にと、帰省時に手料理をふるまうと誓う人。キャンパス周辺の農家や漁師をできるだけ応援したいと、直売所に繁く通う人。
  今年6月。青森で始まる「若者たちの自炊塾」のオープニング講演には、自炊を身につけようと志す弘前大の学生が集まってくれました。彼らの心と行動にどのような変化が起こるのか。今後が楽しみです。

若者たちの自炊塾の受講を希望してくれた弘前大の学生有志。いつの時代も若者は希望の星だ。

 

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情報掲載:2017年8月15日



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