マーケティング情報


消費地レポート

第100回

(一社)食と農共創プロデュサー理事 
加藤寛昭 氏

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【加藤寛昭 氏 プロフィール】

 公立大学法人高崎経済大学経済学部卒業。ライオン株式会社にて食品の営業マネジャー、製品開プロダクトマネジャー、管理部長、食材販売部長を歴任。53歳で選択定年制にて退職。その後、オムロンが子会社を通じて農業(いまでいう植物工場)に参入するに当たりその企画段階から参加。新会社にて農産物の流通開発・営業、マーケティングを担当。
 2002年食と農研究所を設立。以後食と農、都市と地方、工業と農業の連携が日本の食を守るとの熱い想いから主に農に軸足を置いてコンサルタント活動を展開。

挑戦しよう!海外の市場に

ミラノ万博で地域食品をプレゼン 

 私たちは、昨年の5月に本場の本物*1の生産者を主体にした30社、80人からなるミッションを編成してミラノ万博に出展をして来ました。オープンしてから2週目で、日本館の大きなブースを使用してイタリアの人に本格的な“和食”をプレゼンするのは初めてであり関係者全員の注目のもとでの催事でした。その様子は地元の放送局はもとより、NHKや民放の取材、新聞社等のマスコミ等で大々的に取り上げられました。

共同通信による配信記事

 この世界の大舞台で披露した商品は雲仙こぶ高菜漬、相内高菜漬け、伊勢たくあん、三河産大豆の八丁味噌、小豆島桶仕込醤油、小豆島佃煮、小城羊羹、薩摩菓子軽羹(お菓子)、鴨方手延べそうめん、別府産乾しいたけ、大豊の碁石茶、凍みこんにゃく、飛騨・高原山椒、堂上蜂屋柿、東出雲の丸畑干柿、松江の炭火あご野焼き、沖縄そば、奥飛騨山之村寒干し大根、紀州雑賀岬の灰干しさんま、枕崎鰹節の本枯れ節、雲州平田の生姜糖、鹿児島の壺造り黒酢、昆布森の棹前昆布、越前の御雲丹、草加せんべい、佐賀関くろめの醤油味付、そのほか甘酒、切干し大根等々でした。けしてメジャーな商品ではありませんが伝統的な日本の地域食品ばかりです。青森県の皆さんがご存じない商品も多いと思います。

試食と実演によるプレゼン

うーん、日本のパスタもいけるじゃないか

 イタリアの人にこれらの食品を知ってもらう為に、いろいろと仕掛けをいたしました。高菜漬けは刻んで飯に混ぜおむすびにしました。食べてもらえるか心配でしたが温かいおむすびは大好評でした。山椒は香りが“命”なのでそれを知ってもらう為にチョコレートに振りかけて食べてもらいました。狙い通り山椒のさわやかな甘い香りが大好評で、その場で何処で買えるのかと聞かれるほどでした。手延べそーめんや沖縄そばは日本から器材を持参して、実演を行いました。イタリアではパスタを各家庭で手作りする習慣があり、皆さん興味をもって観て頂きました。同じ小麦粉を使ってつくる麺でも、“こねる”と“うつ”による作り方の違いでこんなに違うものができるのかと皆さん一応に驚いていました。

  小城羊羹、軽羹や生姜糖は彼らが初めてみる日本のスイーツでした。草加せんべいは試食用に2,000枚を用意しましたが、若い人に大変好評であっという間に無くなってしまいました。ヨーロッパには米を原料にしたお菓子はないようで、とても興味を持って食べていました。凍みこんにゃくは、理解してもらえないのではと危惧をしていましたが、通訳の方のイタリア語がとても的確で素晴らしかったせいもありヘルシー食材としての認識を持って頂けました。

プレゼン後の感想

海外仕様のパッケージの八丁味噌

 当然どの食品もイタリアの人たちにとっては初めて食べるものばかりでしたが、丁寧に説明をすれば、和食の美味しさと日本の伝統食品に対する理解は得られると感じることが出来ました。特に興味深かったことに、甘酒を試飲した人の多くが、この甘さは本当に米糀を使い発酵させて出来る糖分に由来するものなのか、砂糖の様な甘味料は使用していないのか?といった質問を寄せる人が多かったことです。後で、通訳の方から聞いたところによれば、イタリアやヨーロッパの人は、発酵・醸造食品は健康に良いといった考え方を持っている人が多い。だから甘酒をはじめとして漬物や味噌、醤油、黒酢などの発酵・醸造食品は受入れられ易いのではないか、とのコメントが印象的でした。考えてみればヨーロッパでは日常的に飲食するチーズやヨーグルト、そしてワインやビールはどれも発酵・醸造技術でつくった食品や飲料でありとうぜんと言えば当然なのかもしれません。

出展して得た成果

  私たちは、ミラノ万博に先立ち一昨年の5月にはフランスの食品展にも出店をして来ました。そうした地道な努力が実り初めております。現在、出展した企業の多くに輸出の話が進んでいます。八丁味噌や黒酢はすでに生産者自らの努力で輸出実績がありますが、プロフェッショナルユーズが多いようです。今回のプレゼンで一般のイタリア人にもその味と基礎調味料としての機能性を知ってもらうことが出来たと思っています。凍みこんにゃく、碁石茶、山椒、手延べそうめん等具体的に取引が始まりましたし、そのほか草加せんべい、小城羊羹、高菜漬け、醤油等の商談も進展しています。碁石茶は生産が間に合わなくなっており嬉しい悲鳴を上げています。これからがますます楽しみです。これらは直接的な成果と言えますが、この他に日本の伝統的な食品をイタリアの人やヨーロッパの人に知ってもらうことができたことも成果と言えると思います。
 海外への輸出の話ばかりでなく、マスコミ等で報道されたことにより国内のお客様からの問い合わせが一挙に増えており生産が追いつかない商品も多くなって来ています。

評価を得た考えられる要因

 食習慣と嗜好の違いが大きいヨーロッパにおいて、日本の伝統系な地域食品とも言えるマイナーな食品が、受け入れられる可能性を発見したことは大きな成果だと自負しております。受け入れられた要因として考えられる主な内容は、

  1. 製造方法・製造技術の確立:製造方法や製造技術に伝統性がありかつ自然との調和が取れていること、
  2. 原料の由来の明確化:原料としての素材の由来が明確になっており、素材の持つ効能や機能性を最大限活かした食品であること。従って場合によっては原料の調達に限界が生じて供給が間に合わない場合もあるがいたずらに量の追及はせず、本物にこだわる姿勢が明確であること、
  3. 安全性の確保:合成保存料や合成着色料、甘味料等の添加物を使用しないといった安全性への配慮があること、
  4. 地域の風土にあった食べ物:地域の風土や気候、自然環境のもとで育まれた地域固有の食べ物であること、
等々が挙げられます。
スローフード発祥の地としてのイタリアであるからこそ、こうした視点から評価がされたのかとも覚えたところです。

輸出に当たってのポイント

 私たちは現在イタリア、フランス、中国、台湾等への輸出事業を展開しております。いまだ拙い経験ではありますがそれをもとに輸出に当たってのポイントをいくつか列挙致しましたのでご参照ください。

  1. プレゼンの場を確保する:先ずは、自分の商品を相手に知ってもらう機会を確保することです。商品をただ単に見せて食べてもらうことで知ってもらえると思ったら大きな間違いです。この食品はこうした環境でこうした作り方をして、こうした機能性があり、こうした食べ方をすると美味しく食べられますといった、物語を話すことが大切です。逆を言えば物語性のない食品の輸出は難しいとも言えます。
    その為の場所(機会)の確保には日本大使館、JETRO事務所、県等の海外出先機関、海外での和食を扱う業者等々から積極的に情報を得ることで実現できます。国や県の支援施策も活用出来ます。
  2. 自分で現地を視察:国や行政機関、金融機関等様々な団体期間が輸出の支援を行っていますが、先ずは自分が現地に行き市場をみることをお勧めします。全てを他人に依頼するのでなく自分で開拓をして足りないところを支援してもらうといった積極性が成功の要因です。
  3. 現地の受入パート―ナーの確保:実際のビジネス開始に当たって当然必要になるのは、輸出国での受入業者の確保が不可欠になります。荷物の引き取りから物流、代金決済を信頼して任せられる業者の確保は大変困難な仕事であることは容易に想像がつくと思います。
 この対応には、既進出業者やJETRO事務所、商社、金融機関等からの情報をもとに探索をすることになります。実際の行動に当たっては1社だけでは難しいものがあります。地域の同業者と連携して取り組むとか、国や行政等の事業に応募することや専門の業者に依頼する等の方法があります。同時に、現地で食材の製造工程や製造技術、品質、食べ方等をきちんと説明してくれる通訳の確保も成否の大きなポイントとなります。

 

 青森には美味しい食材が一杯あります。輸出への本格的な取組は始まったばかりと言っても良いと思います。青森の食材を海外の店頭に並べませんか。

*1
本場の本物とは、(一社)食品産業センターが認定機関であり、狙いとして日本各地の豊かな伝統的食文化を守り、育てるために設けられた地理的表示認証制度いわば、地域食品ブランド認証です。生産者の原料(国産品を原則)と製法へのこだわりの証です。現在46品目が認定されています。
詳しくは食品産業センタ-ホームページをご参照ください。


 人気の日本館は2時間待ち 日本人学校の小学生による
コーラスで開幕 

おい、味噌だってよ、はじめてだよな
そう、仕込んでから3年熟成させるんだっ
手延べそうめんへの挑戦!
「おっととと、お前それでは力を入れ
過ぎ。切れちゃったでないか」

以上

情報掲載:2016年4月15日



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